第29話 命の花を調合したい!
自分には調合はできないかな。不器用だから。同時にボタン押せないんだよ。
私とフェルルの2人は、ラディアさんに頼まれてクエストの続きをすることになった。
今回は、ただ白百合の花を持って来るだけじゃ駄目で、これを薬にしないといけない。でも私は薬の作り方なんてわからないし、ここはフェルルに任せるしかない。
「フェルル、薬作れる?」
「うーん、簡単なのだったらね。でも、今回は無理っぽい」
「そうなの?」
「うん。命の花を使った調合はこの間やったけど、あれはあくまで簡易的なものだから。でも今回のは、納品目的のちゃんとしたやつになるでしょ?流石にね」
「そっか」
私は落ち込んだ。
それを見たフェルルもため息を吐くが、フェルルのせいじゃない。ってなると、如何しようか。
私とフェルルは一旦、ギルドに行ってみることにした。
「クレアさん」
「如何したんですか、クロエさんにフェルルさん。クエストは終わったんですか?」
「いや、それがぁー」
「余計な仕事を増やされちゃって」
「はい?」
クレアさんは首を傾げた。
私とフェルルはクレアさんに一連のことを簡単に話すと、クレアさんは顔を歪めた。
「それは、大変ですね。騎士団の皆さんの直々のクエストだったとしても、私でしたら遠慮させていただきたくなります」
「それもそうなんですけど」
だけど、もう一回受けてしまったものは仕方ない。
そこで私達はこのギルドに登録している冒険者なら、何とか薬が作れるんじゃないかと思い、ついでに相談してみることにした。
「クレアさん、このギルドに薬を作れる人はいますか?」
「薬とは、例のクエストのですか?残念ですが、ございませんね」
クレアさんの口から出たのは、私達が落胆するには十分すぎるものだった。
その理由を聞いてみると、とてもシンプルだった。
「このギルドには、命の花を扱えるだけの実力ある冒険者は現在いないんですよ」
「そうなんですか?」
「もちろん、以前はいましたよ。現在登録されている方でもその才能を遺憾なく発揮されている方もいます」
「それじゃあ!」
「でも駄目なんです。今その方達は、遠征していて、この町にはいないんです」
「そんなぁー」
そんなのあんまりだよ。
この急いでいる時に限って、そんなのってない。何故急いでいるかだが、命の花は寿命が短くて、空気の悪いところだと、それが加速するそうなのだ。
だから早くしないといけない。
「本当にごめんなさい。もう少し早かったら、私も力になってあげられたかもしれないのに」
「クレアさんのせいじゃないですよ。ねっ、フェルル」
「うん。だからそんな顔しないでよ」
「クロエさん、フェルルさん」
本当に真面目な人だ。
私はそれがわかっただけで、心からホッとしたし尊敬した。
「如何しようか、フェルル?」
「とりあえず宿に戻る?」
「それもそうだね」
私とフェルルはギルドを出た。
このまま町の中をぶらぶらしていても、如何にもならない。ここは時間が解決してくれることを祈ることにして、私達は先に宿屋に帰ることにした。
「「ただいまー!」」
宿屋に戻ったが、ミフユさんの声はしない。もしかしたら買い物に出掛けているのかも。
そう思ったので、私とフェルルは一旦自分達の部屋に戻ることにした。
「あっ、師匠」
「なに?」
「命の花、テーブルの上にでも置いておいたら?埃っぽいところにより、こっちの方がいいよ」
「それもそうだね」
私はフェルルの意見を汲み取って、1階のテーブルに置いておくことにした。
こんな花、誰も取らないだろう。
私はラディアさんからの依頼書を下敷きに、テーブルの上に置いておくのでした。




