第27話 白百合の正体
今回はクロエのスキル大活躍の巻。
私達は浮島に辿り着いた。
そこにはフェルルの言っていた通り、白い花が咲いていた。
ラッパみたいに広がった花弁。しかも大きい。茎は細くて、香りも強い。昔、図鑑で見たことがあるから間違いない。
「これが白百合?」
「そのようですね」
シルフは肯定してくれた。
私は早速しゃがみ込んで、拾おうとしたのだが、どうもフェルルの顔色はムッとしている。
「フェルル?」
「これって、命の花だ」
「命の花?」
そう言えばゴブリンワイフを治した時に使っていた花の名前も、命の花だった気がする。しかし、そんな偶然があるのか。
もしかして、白百合の正体が命の花ってことになるのかな?そもそも、それって何よ。
「フェルル、命の花って?」
「この間、ゴブリンワイフに使った花の蜜。あれが命の花だよ。私も、搾った後の残り蜜しか使わなかったけど、かなり高価な代物だよ」
フェルルの説明はさらに続いた。
「命の花の効果はとんでもなく高いんだ。だけど、まさかこんなに咲いている群生地が見つかるなんて」
「珍しいんだ」
「うん、聞いたことない」
フェルルは、命の花の価値について簡単にだけど、熱弁した。
つまり要約すると、高いし珍しいけど、とんでもなく高い効果を持っている。そういうことでいいのかな?
「それはいいけど、これをまだ帰らなきゃいけないんでしょ?」
私が手を伸ばして、白百合を採ろうとしたが、フェルルは私の手を掴んで止めた。
「えっ?」
「確か噂で聞いたんだけど、命の花は採取がとっても難しいんだよ。根っこが土から離れた瞬間に、もの凄い速度で枯れちゃうらしいんだ」
「それじゃあ、どうすればいいの?」
「うーん、最悪蜜だけまだ帰るしかないよ」
フェルルは頼りなげに答える。
しかしそれじゃあクエスト完了にならない。そこで私は自分の持っている武器を総動員して、考えた。その結果、一つアイデアが浮かんだ。
「あっ、そうだ!」
ポンと掌を叩いた。
「何か思いついたの、師匠?」
「うん。ちょっと試してみようと思って」
そこで私は白百合の咲いている土を触った。
一輪だけ、両手で持ち上げる。そして私がやることは、もうお決まりだよね。
「ビルドメーカー!」
私がそう叫ぶと、土が急にスポンジみたいになる。
そう、私がやったのは土を水を含んだスポンジに帰ることで、持って帰れるようにしたのだ。
わかりやすい例えなら、スーパーの片隅で売っている、カイワレダイコンのカップとほとんど同じことをしただけだ。
「凄いよ師匠!これなら、楽に持って帰られるね」
「うん。後はこれを……」
私は肩から下げる、鞄の中に押し込んだ。このままじゃぐちゃぐちゃになっちゃうところを、予め、鞄をビルドメーカーで作り替えてあるので、この世界で言う魔法の鞄と同じだ。
「主人様、そちらは」
「私が能力で変化した鞄だよ」
「それでしたら、後でお願いがございます」
「お願い?うん、難しくないことならいいよ」
「ありがとうございます」
ペコリと頭を下げる、シルフ。
そんな彼女の考えていることは、流石に予想出来ないので、今回は一旦保留にする。
とにかく、これでクエストは無事完了。
私達は町に戻ることにしたのでした。




