第26話 いざ、白百合を採りに
今日は、緊張しました。
でもこれからの方が大変だから、しんどいなー。
本当に契約が出来たのか不安だ。
私はフェルルに聞いてみる。
「フェルル、今ので本当によかったのかな?」
「うん。大丈夫なはずだよ。ほら見てよ、ちゃんと魔法陣消えてるでしょ」
「消えるか消えてないかで、判断していいのかな?」
ちょっとそれは流石にアバウトすぎませんか。流石に、それはアバウトすぎる設定じゃないですかね。そう思うのは私だけなのか、正直言って怪しい。
「シルフは何か違和感とかない?」
「はい、ありませんよ」
「ありませんよって、ってそんなことより“シルフ”って名前で本当に良かった?私、センスないと思ったけど」
「いえ、名前をいただけただけ、私は感謝しかありません」
「そんなものかな?」
「はい」
シルフが無理してるんじゃないかと思ってしまうのは、私だけだろうか?
まぁ一回それは別として、これで私はシルフと契約したテイマーになったってことになる。
そんな実感は全くないけど、ふと右の掌を開いたり、閉じたりしてみる。
「何してるの、師匠?」
「なんでもないよ。気にしないで、と言うか気にして欲しくないかな」
「う、うん。わかった」
「はい、この話はおしまい」
と言うことで、これからやることは決まった。とりあえず方針の確認だ。
「それじゃあ、そろそろ白百合を探しに行こうか」
「探すって言うより、あの浮島まで行けばいいんだけどね」
「それはそうなんだけど、浮島だから歩いていけないんだよ。うーん、やっぱり泳ぐしかないのかな?」
私は腕組みして考えた。
イカダを作って、湖を進むとか、そんな原始的な方法は通用しないのだろうか?私のビルドメーカーならすぐに作れると思うけど、そもそも原動力が手漕ぎになるから、結局キツいのかもね。
「仕方ない、泳いで行こうか」
「それしかないよね。よーし、じゃあ早速」
「お待ちください!」
早速フェルルは湖の中に飛び込もうとした。
しかし、それを引き止めたのはまさかの、シルフだった。
「なーに、シルフ?」
「もしかしてですが、あの花の元まで、辿り着けばよいのでしょうか?」
「うん、そうだよ」
「でしたら、私にお任せください」
そう言って、シルフはコクリと首を縦に振る。
しかし私には、よく分からなかった。
「フェルル、何かわかる?」
「うーん、まぁフェンリルの特徴が分かってたらね」
「フェンリルの特徴?」
私はあんまり検討がつかなかった。頭の中の知識を振り絞ってみても、せいぜい北欧神話に関係しているとか、そんなとこぐらいだ。
「シルフ、本当に大丈夫?」
「任せてください。ですので、主人様、ご心配には及びません」
「百聞は一見にしかずってことね」
「百聞?」
フェルルはポカンとしていた。
この世界には浸透していない言葉なので、仕方ない。
それはそうと、一体何をするのだろうかと思い、シルフを見守る。すると、シルフは軽く遠吠えした。
「ウォォォォォォォォォォン!」
すると急に湖の様子がおかしくなる。
白い靄が出てきて、急に周りが寒くなった気がした。
「えっ、何!?」
「これがフェンリルの力だよ」
「これがって、えっ!?」
私がふと湖に視線を戻すと、湖がどんどん凍っていく。
パリリッ、パリリリンッと、湖の表面が鏡面仕様の、氷に変わる。
「嘘でしょ!これって、シルフがやったの?」
「はい。これが私の力です」
シルフはそう答えた。
フェルルの話によると、フェンリルにはとんでもない氷属性の魔法が使えるらしい。
「凄いでしょ、だからフェンリルは珍しくて、崇高な存在なんだよ」
「そうなんだ、じゃあ私ってすっごいラッキー?」
「あったり前じゃん!」
私はフェルルにグーサインをされる。
そうこうしているうちに、湖は凍り、人が歩いても大丈夫になっていた。
「主人様、これでどうでしょうか?」
「凄いよシルフ。ありがとね」
「いえ、それでは参りましょうか」
私とフェルルは互いに顔を見合わせると、シルフを連れて氷の上を渡る。
氷は非常に固くなり、私達が歩いてもびくともしなかった。こうして私達は無事に、浮島まで辿りつけるようになり、ほっと胸を撫で下ろすのでした。




