第14話 ゴブリン達と同盟を組んだ話。
これで、第1章はおしまいです。
次から、第2章になります。
私達はゴブリンロードに頭を下げられ、そう口にされてしまった。
困惑する私達だったが、ゴブリン達は一同、勢揃いして、深々と頭を下げた。
「ゴブリンワイフは俺達にとって、最愛の存在だ。その命を救ってくれた2人には感謝してもしきれない」
「それはわかったけど」
「臣従って言い過ぎじゃない?」
フェルルの言う通りだ。
私達は大したことはしていない。それよりもここまでの家族愛があって、そんな彼らの仲間達を知らずとはいえ、殺してしまった私達の方が謝らないといけない。
だけどゴブリンロード達は「それは仕方のないこと。アイツらもそれを受け入れていた」と語るのだ。
「それでも臣従なんて重たい話だよ。私達が人間の代表なんて」
「それは違うぞ。俺達は、人族ではなく2人に付き従うと決めたのだ」
ゴブリンロードはそこだけは堅かった。だけどそれは同時に、私達のことをかなり信用してくれている証拠でもある。
それを無碍には出来ず、私はチラッとフェルルに視線を移すと、「私は師匠の意見に従うよ」と丸投げだった。そこで私は、
「わかった。でも臣従じゃなくて、同盟ならいいよ」
「同盟?」
ゴブリンロード達は困った顔をする。
「うん。私達は皆んなをどうにかはしない。だけど、同盟だったら困った時に、お互い力を貸しあえるでしょ」
「それでいいのか?」
「うん。それじゃあ駄目かな?」
私は逆に頼んだ。
するとゴブリン達は「同じことだ」と言い合い始め、結果として同盟を結ぶことになった。
そこで一つ取り決めをすることにした。
これはとっても大事なことだ。
「それでね、一つだけ守って欲しいことがあるんだけどいいかな?」
「なんだ」
「森に侵入して来て、敵意がない人間相手には優しくしてあげてね。私は、そんな殺伐とした空気は好きじゃないんだ」
それだけお願いしておく。
これはつまり、“あんまり争わないで”ってことが言いたいだけ。ただそれだけだった。
するとゴブリン達はそれをすんなり受け入れてくれた。こんな素敵な村が、血みどろになる姿はみたくない。ちなみにこれ、フラグじゃないからね。
「フェルルと言ったな。お前はそれでいいのか?」
「私は師匠の意見に従うだけだよ。それから、あんまり大勢で森の外に出て来ちゃ駄目だよ。人間に倒されちゃうからね」
「注意する」
フェルルは冒険者や騎士がゴブリンの仲間達を襲わないようにと、釘を刺したのだ。
その対応はかなりいい。こう見えて、フェルルは色々考えている。
「それじゃあ、私達は帰るね」
「ああ。また来てくれ、今度はゆっくりして行くといい」
「そうします」
「じゃあねー」
フェルルは手を振ってゴブリン達に別れを告げる。
私達の本来のクエストはゴブリン退治だったけど、その必要もなくなったみたいだ。
後日私達はこの功績を讃えられることになった。そのおかげも相まってか、私達の冒険者ランクは1つ上がるのでした。
「これで少し難しいクエストが出来るね」
「そうだね」
隣でフェルルの瞳がキラッキラに輝いていたのを、私は見逃したりしませんでした。




