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第12話 ゴブリンロード

明日から投稿話数が1〜2話になります。

うち、1話は20時〜21時の間に投稿するよう心がけるので、ぜひブックマーク登録してくれると嬉しいです。

「俺の名前はゴブリンロード。コイツら、親分だ」


 なんとなんと名乗ってくれた。

 ゴブリンロードと呼ばれた巨大なゴブリンは、手に棍棒(こんぼう)を持っていて、それを私達に向かって容赦(ようしゃ)なく、叩きつける。


「「うわぁ!!」」


 私達は急いでその場から離れた。

 だけど飛び散った石の破片(はへん)が細かくて、私達の肌を切る。


「いったぁ」

「大丈夫、師匠!」

「うん。私は、治せるから」


 そこで私はビルドメーカーを使って、自分の身体を瞬時に治した。あっという間に元通りになっていて、さっきまでの怪我が嘘のようになくなる。


「なに!?お前、なにをした!」

「傷を治しただけだけど」

「だけだと?」


 そりゃそんな顔されるよね。

 ゴブリンロードは不思議そうに、口をひん曲げる。

 その油断をついて、先に攻め込んだのはフェルルだった。


先手必勝(せんてひっしょう)。いっくよー!」

「甘い!」


 ゴブリンロードは棍棒を握っていない左手で、フェルルを吹き飛ばす。


「うわぁ!」

「フェルル!」


 空中で体勢を立て直し、間一発(かんいっぱつ)のところで、フェルルは地面に着地した。

 あまりのことで、よく見えなかったけどとんでもない身体能力(しんたいのうりょく)に違いない。

 対するゴブリンロードも仲間ためかは知らないけど、勇者フェルルに負けていない。


(どっちも強い。だけど……)


 明らかにゴブリンロードの挙動(きょどう)はおかしかった。

 まるで“私達を足止め”することが目的みたいに、さっきから一歩も動いていない。

 もし、私達をさっさと倒してしまいたいのなら、その場から動けばいいのに、私達が攻め込まないと一切(いっさい)動かないのだ。


(何かあるんだ。この先に、私達を行かせたくない理由が)


 だけどその見当(けんとう)がつかない。

 そんな中、フェルルはさらに突き進んだ。

 それを見た私は、瞬時にフェルルの前に出て、無理矢理止める。


「フェルル、ストップ!」

「うわぁ!?」


 急に私が目の前に出て来たからか、驚いたフェルルは急ブレーキをかける。


「なに、師匠」

「ちょっとだけ待ってよ。ねぇゴブリンロード、私達は戦わなくても済むならそれでいいの。だけど代わりに教えて」

「教えてだと?」

「うん。皆んなは一体何を守ってるの!」


 私はそう尋ねる。

 だってさっきから変な動きばっかりで、全然攻撃してこない。最初の攻撃が、侵入者(しんにゅうしゃ)を追い返すものだったら辻褄(つじつま)も合うし、理由もわかる。


「この先に何かあるんでしょ?」

「何故それを」

「やっぱりそうなんだ。ねぇ、教えて。私達も力になりたいんだよ」


 私はそう熱意を持って、伝える。

 するとゴブリンロードは少し迷っていたが、さっき私が自分で傷を治したことに興味を持ってくれたおかげで、すんなりと通してくれた。


「付いて来い」


 そう言ってゴブリンロードは、森の奥地に向かって歩き出す。

 私とフェルルも武器をしまって、ゴブリンロードや他のゴブリンの後に続いた。


 そうしてしばらく暗い森の中を、ひたすら歩いていると、(ひら)けた場所に出た。

 そこは小さな村のようになっていて、茅葺(かやぶき)屋根の家がいくつもある。


「ここって、ゴブリン達の村?」

「そうだ。こっちだ」


 そう(うなが)されさらに付いて行くと、そこにあったのは他とは比べ物にならない豪華な家だった。


「中を見てみろ。だが、あまり大声を出すなよ」


 ゴブリンロードは私達を家の中に招き入れた。

 そこは色んな旗の装飾(そうしょく)(ほどこ)されている。

 そしてその中で1人寝そべっていたのは、痩せ細ったゴブリンだったが、見た限り明らかに性別が違っていた。


「メスのゴブリン?」

「嘘っ!?そんなのってあるの!」


 フェルルは大声を出した。

 すると、近くで看病をしていた他のゴブリンに怒られる。どうやらこの村のゴブリン達は、皆んな人の言葉がわかるみたいだ。


「フェルル、メスのゴブリンってそんなに珍しいの?」

「うん。そもそもゴブリンって、ほとんどがオスだからね。でも、(まれ)にメスのゴブリンが産まれることもあるそうなんだけど、身体が弱いんだって」


 確かにこのゴブリンもかなり弱っていた。

 腕は痩せ細り、衰弱(すいじゃく)しきっている。かなり辛そうだ。


「もしかして、このゴブリンを守るために」

「そうだ」


 ゴブリンロードはそう答える。

 だから突然ゴブリン達が大量に現れて、森を守るように動いてたんだ。そのため、こっちから手を出さないと攻撃してこない。全部合点(がてん)がいく。


「しんどそうだね」

「うん」


 さっきから息遣いがとても荒い。このままじゃ本当に死んじゃうよ。

 何とかしてあげたい。私はそう思う。ゴブリンロード達もそれを期待して、私達をここに連れて来たんだ。

 それが重たくのしかかって来て、おまけにゴブリンロードは私達に頭を下げた。


「頼む。ゴブリンワイフを助けてやってくれ!」


 深々と頭を下げられて、私とフェルルは困惑した。

 だけどそれ以上に“助けてあげたい”。そんな気持ちで心がいっぱいになっていた。


「フェルル」

「わかってるよ、師匠。大丈夫、だって私は勇者なんだよ!」


 とても頼りになる一言だった。

 私とフェルルは各々(おのおの)が出来ることを、手の空いているゴブリン達と力を合わせるのであった。

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