4.発表会(7)
こんなことになってしまうなんて――
教室の隅で、金紙と銀紙を手に、ひろとタカは居心地の悪い思いをしていた。
あれだけ子供たちを惹きつけていた、自分たちのキラキラの色紙が、途端に価値のない物に思えたからだった。
「……なんだよ!」
タカは不貞腐れ、自分の金の色紙をグシャグシャにして、部屋のゴミ箱めがけて投げ捨てた。
そういう時に限って、狙いは外れるものだ。紙はゴミ箱の縁で跳ね、コロコロと転がって床に止まった。
その様子を見ていたあきらがゆっくりと歩いて来て、丸められゴミとなった色紙を拾い上げた。
「ねえ、タカくん。色紙を使えば、すごく大きなクワガタムシとかトンボが作れるんだって。2枚の紙を組み合わせるみたい。だから今度いっしょに、おじいさんの所に、折り方を習いに行かない?」
それを聞いたタカは、ひろと顔を見合わせた。彼らにとって、もう別に紙の色へのこだわりとかは、どうでも良くなっていた。
「おお、いいぜ」
タカはうなずいた。そしてそれを聞いたあきらも、笑みを返した。
『おっと、こっちにもお客さんだぜ、あきら。まったく人気者だな』
掌から移動したカエルが、あきらの肩の上から喋りかけた。
あきらはその声を聞いて振り向いた。
「ヒナちゃん……」
ヒナは級友たちがあきらの周りから去るまで、話しかけるのを遠慮し待っていたのだった。
「はっぴょうかいのあきらくん、すごかったよ。ヒナ、驚いちゃった。これでタカくんたちとも、仲良くなれるね」
言葉ではあきらを応援していたが、ヒナの表情は何だか淋しげだった。
2人の間に、気まずい沈黙が流れる。
「じゃあヒナ、帰るね。あきらくん、バイバイ」
踵を返して立ち去ろうとするヒナの足を止めたのは、あきらのPAだった。
『ヒナちゃん。俺の主人が、君に何か言いたいってさ』
ヒナは驚いて、あきらの顔を見た。
あきらは照れくさそうな顔をして困っていたが、ついに、指で頭を掻きながらヒナに口を開いた。
「オシロイバナ」
「え?」
「その赤い紙に映っている花のことだよ。それも色紙で折れるんだ」
「そうなの?」
「うん……でね……」
あきらは続けられなくなって、床の上の自分の親指を眺めて、もじもじとしていた。やがて決意して、ヒナに右手を出した。
「そのおじいさんが言ったんだ。『自分が色紙を上手に折りたかったら、人に教えることも上手になるのがコツだよ』って。だからヒナちゃん。あっちで僕に、オシロイバナの折り方を、教えさせてくれない?」
あきらの言葉は、じわじわとヒナの胸に染み込んでいった。冷たかった胸の奥が、じんわりと暖かくなった気がして、少女は嬉しさに瞳を輝かせた。
「うん!」
ヒナはあきらが差し出した手を、両手でぎゅっとつかんだ。
2人はそのまま、級友たちが集まる、教室の奥へと歩いて行った。
『どうやら俺の記憶、消されなくて済みそうだな』
奥の方から、ニホンアマガエルがケロケロと笑う声が聞こえた。
(イロガミ おわり)




