4.発表会(6)
静寂をやぶって、カエルの鳴き声が響いた。
あきらの右手に乗っていたのは、小さな緑色のアマガエルだった。
粘膜に覆われた目のテカリ。黄緑色の水に濡れた肌の質感。小さく上下する喉の下の皮膚。
それはただの平面の映像ではない。どの角度から見ても、本物のアマガエルにしか見えなかった。
あの紙でできていた姿が嘘だったかのように、カラーペーパーは、生き物そのものに変化した。
『わお! こりゃいいや。なあ、あきら。今度の変化は楽しいな。俺も動きやすいぜ』
あきらのPAが、ごきげんな声を出した。
「これが僕のほしかった本当の色紙です。だって誰でも、どの色でも、自分が欲しいものが作れるんだから」
「あきらくん、すごいよ!」
皆が固まっていた中、ヒナがひとり、嬉しそうに拍手をした。
あきらの左手でバサバサと羽音がした。掌で生まれた小鳥が、音に驚いて教室の天井へと飛び立ったのだ。
身をかがめたあきらは、床の上に左手を差し出し、乗っていたウサギを床に離した。
ウサギは呆けている人々を気にすることなく、客席の通路へぴょんぴょんと跳ねていった。
それがきっかけとなって、周りから大きな拍手がおこった。びっくりするぐらい、大きな音だった。
途端に、舞台の上のあきらは、飛び出してきた園児たちの一団に囲まれた。
「すごい! あきらくん!」
「ねえ、ねえ! 僕にもあのカエルを教えてよ!」
「私はお花!」
「ちょっと、私が先!」
あきらはカエルを落とさないようにしながら、園児たちの相手をするのに必死だった。
保育園の先生たちは、あまりのできごとに、自分たちの仕事を忘れて、ただ立ち尽くしていた。
「あ、あれ? カラーペーパーって、あんな事できたっけ? ねえ……先生?」
「え……は、はい! あ、あの……説明書……説明書……」
マコ先生はありもしない機能の説明ページを、ただ呆然と探していた。




