4.発表会(5)
「え?」
司会の先生は、驚いてヒナを見た。そのせいなのかマイクの角度が変わり、スピーカーから激しいハウリング音が響いた。
たまらず観客たちは喋るのをやめ、拍手を中断して耳を塞ぐ。その結果、再び場が静かになった。
用意されたようなこの時に、あきらが静かに喋り始めた。
「このまえ公園で、あるおじいさんに会いました。僕はその人に、この色紙の本当の使い方を教わりました」
あきらは緑色の紙のカエルを愛しそうに持ちながら、立ち上がった。皆に見えるように、右のたなごころを開いて、その上にポンと乗せる。
「そのひとつが、このカエルです。1枚の紙を決まった方法で折ることで、本当にたくさんの形を作ることができます」
あきらはポケットの中から、すでに折り上げた別の色紙を取り出した。今度はそれを左の掌に乗せる。
紙で折った水色の小鳥と白いウサギだった。どれも直線を基準にして形を成している。ただ何回も折って、開いて、切って、作られていた。写真でも図鑑でも、本物を見たことのある者なら、容易に元の形が想像できる、不思議な紙の細工だった。
「そして僕みたいな子供にも、作れるんですよ」
最初は笑っていた皆が、その幾何学的な細工の見事さと、あきらの話を聞いて、だんだんと惹き込まれていった。
「そして、僕はさいごにふしぎな言葉を教わりました」
あきらはにこっと笑った。
「それがこの紙のほんとの力。僕らはこの子たちに、いのちをふき込めるんだ」
そして彼はそっと、その言葉を唱えた。
「オリ・ガミ」
しゅわっと、あきらの掌の上で星が弾けた。
さきほど取り出されたカラーペーパーの細工たちが、みるみるうちに光りだした。
最初に変化が起こったのは、緑のニホンアマガエルだった。
紙の外側の形を縁取るように、緑色の光る線があらわれ、カエル全体を覆いだした。
光が強くなると、そのぶん周囲が暗くなって、カエルの色紙本体は見えなくなっていく。いつしかその姿は、一筆書きのように、縁取りられた光の線だけになった。
他の小鳥や魚も、同じように縁取りの看板のようになり、それぞれの色を放って、あきらの掌の上に、浮かんでいた。
やがて次の変化が起こった。直線が徐々に曲がり出した。その線は自然界が生み出した、なめらかなカーブへと変わっていく。
その変化が、カエルの目にも足にもお腹にも、あらゆる部分に起こっていった。
急に光がぱっと消えた。しばらくの間、人の目には残像の線しか見えなかった。目が慣れてくると、そこに何かがうごめいていた。
『ケロケロ』




