4.発表会(4)
保護者ビデオ席でも混乱が起こっていた。
「ね、ねえ……あきらママ! あれ……何をしてるの?」
「あきらくん、今日少し、変だった気がするんだけど?」
「ちょっとぉ、ママが助けてあげた方がいいんじゃない?」
口々に責め立てられるあきらの母。ビデオを片手にどうして良いか分からない状態だった。
やがて人々の騒ぎがピタリと収まった。
あきらが自分の作業を終えたのだ。
彼はすっかり小さく折り畳まれ、形の変わったそれを掌に納めた。
平らにした手の上で伸ばし、形を整え、再び床に置く。
「できました」
あきらが宣言した。
大人たちも子供たちも目を瞬いて、完成したものを呆然と見ていた。
それは紙でできたカエルだった。
もちろん生きてはいない。けれど確かに1枚の四角い紙を使い、不思議な折り方をして出来上がった、緑の紙の生き物だった。
あきらはしゃがんで、紙でできたカエルのお尻を、人差し指で撫でた。それはぴょんと、前に小さくジャンプした。
「ニホンアマガエルです」
そのひと声がきっかけとなり、せきを切るように場の全員が喋り出した。
「あれは何だ!? 見たこと無いぞ!」
「新しい玩具? マデル社のウェブサイトには乗ってないぞ?」
「いやカエルって言っても……ありゃ、ただの紙だよ!」
「はは、何だよあれ。ニセモンじゃないか! からーぺーぱーのカエルのほうが、ぜんぜん本物じゃん!」
客席から上がる声の9割は、苦笑やため息など、称賛には程遠いものだった。
その批判があまりに酷いので、ついには何人もの先生たちが子供たちの間に入り、フォローに追われた。
「み、みなさーん、ご静粛にー。あきらくんの発表でした! 拍手をお願いしまーす」
司会の声が響いた。
大人たちは顔を見合わせ、まあ仕方ないといった様子で手を叩き始めた。
あきらのママは、どうしようもない表情のまま赤面し、ひたすら下を向いていた。
ヒナだけは違った。少女はまだ舞台に注目していた。
「あきらくん……」
あきらはそのまま、前を向いていた。顔は伏せていない。彼は恥ずかしさなど、微塵も感じていない様子だった。
そして瞳の中には、これから起こそうとする、何かへの強い意志が見て取れた。
だからヒナは、それを信じて大きな声で叫んだ。
「先生、待って! あきらくんの発表、まだ終わってないから!」




