4.発表会(1)
「あら、あきらくんのママ。おはよー」
「あ、めいちゃんママ。おはよ~……ふあぁ」
「どうしたの? 何だか眠そうね」
「んー、あのね、あきらが1週間ぐらい前からずっと、夜中まで寝ないの。何かの遊びに熱中しててさ。それでこっちも寝不足になっちゃって……」
「あはは、あきらくん元気いっぱいね」
「それでね。あきらが寝るようパパに説得をお願いしたんだけどさー。パパまで一緒に寝なくなっちゃって……ふたりで熱中してるの。もう、いやんなっちゃう」
「ふふ、そうなんだ、大変ね。あれ、あきらくんは?」
「ヒナちゃんと一緒に中に行ったよ。ほら教室の真ん中で、皆と一緒に並んでる。私たちも行きましょ」
母親たちが教室の中へ入ると、そこには先生の前で行儀よく、列を作って座る子供たちの姿があった。
これから行われる発表会の本番を前に、保育士が子供たちにおさらいの説明をしていた。
「はい。ここでにじ組の踊りはおしまいでーす。その次はたいよう組さんたちの、カラーペーパーの作品発表をやりますーす。みんなちゃんと色紙、持ってきてるかなー」
「「「はーい」」」
男女混ざった、子供たちの元気な返事。発表が待ちきれない何人かの子は、自分の作品をさっさとカバンから取り出していた。
周りの友達をつかまえ、互いに見せっこを始める。
「どう、俺のすごいだろ!」
「私のきれいな色を見て!」
そんな楽しそうな声がする中で、ヒナも自分の赤いペーパーを取り出して、膝の上に置いていた。
中央に映るオシロイバナを覆うように、緑のクレパスで葉の色をつけ、ピンクの色をふった綿の雲をあしらっている。
素朴だが何とも女の子らしい作品に仕上がっていた。誰かに見せれば褒めてもらえる出来なのだが、ヒナはそんな気分になれなかった。
むしろ落ち着かない様子で、しきりに自分の背後を気にし、ちらちらと見ていた。
普段は落ち着きのあるヒナがそんな様子なのには理由があった。ヒナは見てしまったからだ。友達のあきらのあの作品を。




