3.公園(7)
あきらにはまるで意味が分からなかった。
「言っただろう? いまのカラーペーパーは外国のおじさんが売り出したものだ。私が考えた思いの半分だけを切り取って、商品にしたものさ」
老人は鞄から新たに1枚のカラーペーパーを取り出した。あきらの好きな黄緑色の紙だった。
「もう大人たちも忘れてしまったのだけれど、紙という素材には、誰にだって出来る素敵な使い方があるんだよ」
その直後、おじいさんがあきらの目の前で見せてくれた手付きに、あきらは目を丸くした。
それは眼の前で、まるで魔法のように行われ、素早く一瞬で終わってしまった。
「さあ、どうだい。これが紙が持つ大事な役割のひとつなんだ。さあ手に取って、君にやり方を教えてあげよう」
老人は、ぼうっと立ち尽くすあきらの手を取った。
「これだけじゃあない。明日もここに来てくれたら、新しい物を教えてあげよう。大丈夫、少し練習したらすぐに出来るから」
老人は今度は胸元から、様々な色の紙――金や銀以外――の束が入ったビニールの包みを取り出した。
「これをあげるから、家で練習してみなさい。コツは最初から丁寧にやること。そうすれば最後が美しく仕上がるから。それとね」
老人はあきらに顔を近づけると、小声で伝えた。
「私はこれを誰にも言わずに、神さまの所に行くつもりだった。けれど今日この公園で君に会えたという幸運のおかげで、この頑固じじいにも君みたいな素敵な子供が他にもいるかもしれないと、信じられるようになったんだ。だからお礼に特別な言葉を教えるよ。ちょっとした仕掛さ。私だって、ただ外国のやつらに我が子をポイっと差し出すのは、嫌だったのでね」
老人はウインクして、いたずらっぽく笑った。
言葉の意味がわからなくても、おじいさんの言葉の熱意が伝わってきて、あきらはドキドキした。
「さあ耳を貸してごらん……」
(3.公園 おわり)




