3.公園(4)
別に悪いことをしている訳ではないのだが、警戒心の強いおとなたちは当然そんな行動を知れば、子どもたちに警告する。
ママは僕にも「変なおじいさんがいるから、気をつけて。おもちゃを受け取っちゃ駄目」と言っていたような気がした。
まだ子供のあきらだから、考えていることが素直に顔に出ていたのだろう。
しかし老人は怪訝な顔をされても、気分を害した様子はなかった。
「どうやら君は私を知っているようだね」
老人はふふと笑うと、あきらの方にゆっくりと近づいて来た。あきらを警戒させないよう、手を広げて何も持っていない事を示す。
あきらは別に怖がってはいなかった。こんな優しそうなおじいさんが、危険な何かを自分にするとは思えない。
だから老人がベンチのとなりに腰をかけてきても、あきらが逃げることはなかった。
おじいさんはおもむろにチャックに手をかけ、かばんの中に手を入れた。そこから何枚もの美しく輝くカラーペーパーを取り出した。
そして子供の目の高さで、手品師がトランプでやるように美しく広げ、全ての紙の色を見えるようにした。
「ほら、カラーペーパーだよ。すごいだろう。すべての色が揃っているんだ」
あきらの目の前で誘惑するように、小さく動かして見せる。
「欲しいかい? とても人気の、金と銀のだってあるんだよ」
その様子を大人が見たら、老人が言葉巧みに、園児を誘惑しているように映っただろう。
最初はその紙たちに見とれていたあきらだったが、不意にそしてきっぱりと、口を開いて告げた。
「いらない」
老人は驚きのあまり、ぽかんと口を開いた。杖を地面に倒してしまっても、そのままにして。
「ほ、本当に? 君の友達も知らない、すごい絵が出てくるんだよ。しかも今までよりもたくさん、絵とおしゃべり出来るよ?」
商談成立の直前で取引を断られたセールスマンのように、老人はうろたえ園児を説き伏せようとした。
しかしあきらの心は決まっていた。
「いいよ。興味ないし、それに、ぴーえーは生意気だから嫌いだし」
あきらは本心から興味がなさそうに返事して、公園の遊具で遊ぶ子どもたちを見つめた。




