3.公園(3)
色紙の一枚が激しくはためいた後、ばっと宙に舞った。とっさに指がそれを追いかけたが間に合わない。
紙は見えない渦に運ばれ弄ばれたのち、ようやく公園の地面にひらひらと落ちてきた。
失くならなくて良かった。ほっとしたあきらが腰を浮かせようとした時、紙は黒い靴のつま先にひっかかって動きを止めた。
あきらはその靴から視線を上げて、その人物の全身を見た。
「やあ」
とつぜん声をかけられ、園児はおろどいてびくっとし、持っていた紙を落としそうになった。
そこには、帽子をかぶって杖を持ったおじいさんが立っていた。
「こんにちは」
老人がまた、声をかけてきた。
「……こんにちは」
あきらは一見行儀よく頭を下げる。けれど目だけは、相手をじっと見つめていた。
白い髭が顔の半分を覆っていて、だいぶ腰が曲がっている。
目がとても丸くて、いつも何か興味がある者を探している子供のようだ。
カーキ色のカバンをたすき掛けにして、ぶら下げていた。
老人は散歩の途中にちょっと公園により、休憩しに来たように見えた。
彼は重たそうな腰をゆっくりと屈めると、手を伸ばしてあきらの色紙を拾い上げた。
「これは君のものかい?」
老人は色紙を差し出すと、あきらに尋ねた。
「はい……」
「そうかそうか、君はこれを大事にしてるんだね。いい子だね」
何かのきっかけが働いたのか、あきらは急に思い出した。彼はこの老人のことを知っていた。
以前何度か、保育園の先生たちと、ママたちが喋っていたのを聞いたことがあった。
それは「ふしんしゃ」の話だった。
ある男の人がこの町に現れるようになった。彼が出没する場所は町にたくさんある公園のどこか。場所は決まっていないらしい。
その人はおじいさんで、遊んでいる子供たちを見つけると寄ってきて話しかける。
子どもたちを「いい子だね」と褒めたのち、貴重なおもちゃのカラーペーパーを渡そうとする。
老人に会った子どもたちによれば、老人はどうもおもちゃをタダで配っているというのだ。




