3.公園(1)
「それでは、また明日会いましょう。みなさん、さようならー」
「さようなら! ほら、あきらも挨拶して!」
「ふふ、いいんですよーお母さん。じゃあね、あきらくん」
「……」
「あきらったら!」
そんなやり取りが交わされるのは、園の迎えがピークとなる時間帯。
子どもたちを迎えに来た父母たちのただいまの声と、親を見て喜ぶ子どもたちの声が重なる。
あきらもそのひとりだ。ちょうど母親に連れられて、園の門から外に出た所だった。
保育園からあきらの家までは5分とかからない。自宅のすぐ近くまでは親子で歩いた。けれど母親は買い物をするという理由を述べ、公園の前であきらと別れた。
「遊びに行くならいちど家に戻ってからね」
去り際、母にそんな言いつけをされたが、少年はほとんど守ったことはない。
あきらは今日も通園カバンを抱えたまま、公園の中に走っていった。
公園はどこの町にもある標準的な広さで、小さな子どもたちと親で賑わっていた。
あきらはすれ違う子供や大人に目もくれず、早足で歩いた。
家に帰ればおやつがあるのは分かっていたが、その誘惑もあきらの足を止められない。彼にはすることがあったからだ。
そう。公園にはお気に入りの場所がある。
みんなが集まるすべり台やブランコではなく、園の隅の方にある2脚のベンチの右側。それがあきらの定位置だった。
どうしてそんな何もない所を? 公園に遊びに来る者ならみな思うだろう。
ベンチの周囲に遊び道具は無いため、あまり子供が寄り付かない。逆にそれが、ここをあきらに気に入らせた理由でもあった。
あきらはベンチに座ると、早速カバンの中から、プラスチック製の正方形のケースを取り出した。
何度も持ち運んでいるせいで、表面は擦れて傷だらけ。それでも持ち主は外観をまったく気にしていない。
入れ物を覆う蓋を開けると、中には何色かの色紙が入っていた。
それらは保育園でもらう度に集めていた、あきらの持つカラーペーパーの全てだった。




