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霊感シリーズ

異能者道明寺かすみ

作者: 神村 律子

 道明寺かすみは予知能力を持った異能者である。


 彼女の予知能力は「予知夢」として発現される事が多い。




 ある朝、彼女は学校で火事が起こった夢を見た。


「はっきりしない。いつ、どれほどの火事が起こるのだろう?」


 かすみは不安に苛まされながら、登校した。




 かすみが通っている女子校は、地元では有名なお嬢様学校だ。


 通学路にはあちこちの男子校の生徒がうろつき、場合によっては警備員が配置される事もある。


 特に隣町には札付きのワルがいる高校があり、かすみ達も何度か「ナンパ」された。


 しかし、彼等もかすみの「予知能力」を知っており、彼女の正体を知ると、まるで妖怪にでもあったかのような速さで逃げ出すのだ。


「道明寺かすみと付き合うと死ぬ」


 そんな噂まで立った事がある。


 かすみと付き合うと死ぬのではない。


 かすみが交際した男子生徒が、偶々不運に見舞われただけなのだ。


 但し、かすみがそれを事前に知っていたのは事実であったが。




「おはよう、かすみ」


「おはよう、あやね」


 桜小路あやねは、かすみとは小学校からの同級生で、一番の親友である。


 そして、あやねは数少ないかすみの能力を理解してくれている存在でもある。


 かすみは朝の予知夢の事をあやねに打ち明けた。


「学校が火事? それは大変ですわね。何か考えた方が宜しくてよ」


 おっとりとした性格のあやねは、のんびりとした口調で意見した。


「そうは思うのだけど、いつ、どこで火事が起こるのかわからないの。今日なのか、明日なのかもはっきりしないわ」


「それは難しいですわね。他の人達にも相談なさったら?」


「そうね」


 かすみはクラス担任の新堂みずほに相談する事にした。


 みずほは日本史の教師で、かすみの能力を知っても、何の偏見のなく彼女に接してくれている。かすみの信頼は絶大なのだ。


 かすみは学校に着くなり職員室に行き、みずほを探した。


「先生、新堂先生はどちらですか?」


 近くにいた男性教師坂出充に尋ねた。すると、


「新堂先生は今日はお休みだよ。聞いていないのか?」


「えっ? 休み?」


 かすみは妙な感覚に襲われた。


 みずほは昨日休む話などしていない。


「わかりました。失礼しました」


 かすみは職員室を出て、教室に向かった。


( あの先生、何度かみずほ先生を誘っているエロ先生だし。何かある…… )


 かすみは自分の席に着くと、瞑想した。


 彼女は予知能力を自らの意志で発現する時、瞑想を開始する。


「あっ!」


 炎の向こうにいるみずほが見えた。


「そういうことなのね」


「どうなさったの?」


 あやねが尋ねて来た。


「あやねさん、後で体育館に付き合ってくれない?」


「ええ、宜しくてよ」


 あやねは、かすみの突然の申し出にキョトンとしたが、すぐに承諾した。




 かすみは3時間目の授業を仮病で抜け出し、付き添いを装ったあやねと共に体育館に向かった。


「どうしてこの時間ですの?」


 あやねが不思議そうな顔で尋ねた。


「あいつの空き時間だからよ」


「あいつ?」


「ワケは後で話すわ」


 かすみとあやねは、体育館の用具室の前に来た。


「ここですの?」


 あやねは嬉しそうに言った。


「ええ。炎の向こうにみずほ先生がいて、そのそばに跳び箱が見えたのよ」


 かすみが扉に手をかけた時、中からみずほ先生の叫び声が聞こえた。


「イヤアアアアッ!」


「先生!」


 かすみとあやねが用具室に入ると、縛られたみずほと、蝋燭と鞭を持った坂出がいた。


「お、お前等……」


 突然入って来た2人に、坂出は狼狽えた。


「何をなさっているのですか、坂出先生?」

 

 あやねが普通の調子で言った。その隙にかすみはみずほに駆け寄り、縄を解いた。


「何があったのですか、先生?」


「坂出先生に薬を嗅がされて、気がついたらここに……」


「キャアアアッ!」

 

 かすみがみずほと話していると、今度はあやねが坂出に捕まった。


「お前でもいい、奴隷になれ!」


「何をなさるの!?」


 あやねは激しくもがいた。そのせいで、坂出は蝋燭を投げ出してしまい、それが近くにあったマットの上に落ち、火が燃え広がった。


「何で?」


 かすみが呆然としていると、みずほが、


「そいつがさっき、変な匂いのする油を撒いたのよ。そのせいだわ」


「何て事を!」


 火は彼女達の想像以上に早く大きくなり、用具室に煙が充満した。


「くそう!」


 目的を達成できないと悟った坂出は一番先に逃げ出し、あろうことか、外からつっかえ棒をして、3人を閉じ込めてしまった。


「扉が開かないですわ、かすみさん」


 力一杯挑戦したあやねが言った。かすみはみずほを庇いながら、炎から逃れようと用具室の隅に行った。


「そうか。だからどこでいつなのかわからなかったのか…」


 かすみは朝の予知夢の曖昧な理由がわかった。


「かすみさん」


「道明寺さん」


 あやねとみずほが不安でいっぱいの顔をかすみに向けた。


「大丈夫。助かるわ」


 かすみは予知夢の続きをさっき確認していた。


 だから自信があったのだ。




 体育館から逃げ出した坂出は、このままではまずいと考え、学校から逃亡するために職員の駐車場に走っていた。


「しばらく行方不明になって、ほとぼりが冷めた頃戻れば…」


 坂出は自分の車のドアを開いて乗り込んだ。


「遅かったですね、坂出先生」


 助手席に、何故かかすみがいる。後部座席にはみずほ。


 坂出は発狂しそうだった。


「ど、どういう、どういう……」


「こういうことですわよ、坂出先生!」


 みずほの正拳突きが炸裂し、坂出はダウンした。




 用具室の火事は、あやねの連絡で駆けつけた他の教師と多くの生徒の手で消し止められ、大事には至らなかった。


 そして坂出は、みずほに対する監禁と暴行の容疑で警察に逮捕された。




 さて、かすみ達は、炎と煙に包まれた用具室からどうやって脱出したのか?


 かすみはテレポート能力も発現するようになったのだ。


 それを教室での予知能力によって知った。


 その能力を使ってみずほとあやねを伴ったまま体育館の外に移動したのである。


「ますます男子に怖がられちゃうかな?」


 そんな心配をしてしまうかすみは、ごく普通の女子高生にしか見えない。


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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公は、現代版のチート様ですね。 予知能力に、テレポートまで。 私もその能力が欲しい! それにしても、坂出先生はマジでクズですね。 女性としては、この世から抹消したいくらいです。
[一言] 僕個人の好みで言えば、ラストのテレポート能力はあまり好みではないですね。 もっと予知夢を応用したトリックで脱出してほしかった気はします。 でも予知夢って設定はベタっぽいですが興味深い設定です…
2011/03/07 23:33 退会済み
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