雨は散乱する
壁を濡らした雨と屋根を濡らした雨に
違いが無いと思うのか
雨は水だから全て濡れるのだと
違いは無いと思うのか
一つの事柄に
一つの答えが必要な人の多いこと
僕等は数字じゃないのだから
いくつも答えがあることを
もっと知っていて良いだろう
壁をつたった雨だったものは
雨と呼んで良いのか
雨どいを通った雨だったものは
雨と呼べないのか
一つの意思に
一つの答えしかないと思うなら
僕等は自分の間違いだけに
敏感になる筈だろう
他人を指差す理由はなんだ
雨音の中に傘音が混ざって
長靴の音、水溜り
ぼんやり蛙
カッパをつたう水滴に
張り付いた髪の毛、透けるシャツ
踵が濡れたズボン
伸びる蛞蝓と滑り鳴る自転車
眼鏡を拭く為に
立ち止まっているあの人
一つだけを大切にする時は
そんなに多くはない
大切にする一つだけを決める時は
一つ以上を考えている
僕等は
一人だけを大切にできないから