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第二十三章 神の啓示☆僕はカルキではない

   1


 皆が和んでいた、その時だ。


『吾は神なり』


 ガガガガガガガーン!

 プラズマが天空を割き、雷鳴が轟く。

 美舞の様子が急変した。

 体は硬く、蒼白となり、目は三白眼で恐ろしい形相になった。


「僕の肩が重いよ」


 先般と異なり、憑依は半分だけの様だ。

 美舞は気を失っていなかった。


「う、何か苦しいかも……」


 玲とマリアとウルフは再び体躯が全く動かなくなっていた。

 勿論、口も利けない状態だ。

 只見ているだけに歯痒い思いをする。


「美舞。又、辛い目に遭って」


 誰もがそう心配している。


『吾は神なり』


 美舞の口を借りて、先日の“吾”、神を名乗るモノが現れた。


『三浦美舞、主に告げる事あり、参った』


 一人芝居を見ている様だ。


「で、用は何?」


 美舞の中の美舞が訊いた。


『三浦美舞、主はカルキなり』


 神を名乗るモノから大きな言葉が飛び出す。


「ぼ、僕がカルキ?」


 美舞は冗句かと思った。


「いつだって唐突だね」


 美舞は血色をもぎ取り、ぎょろっと目の玉を戻して、又美しい元の美舞に戻ったが、体の硬直は取れなかった。

 神を名乗るモノが皆の前で語り出す。


『カルキは神の中の神。主こそがカルキなり』


 厳かに美舞の口から神の声が聞こえた。


『神の国へ誘うが如何なものか』


 神はカルキである美舞に問い掛ける。


「いいよ。遠慮する。僕は。地球でやりたい事があるんだ」


 自分と話しを付けていた。


『そうか。主、カルキに従う』


 神を名乗るモノは、カルキだと名指す美舞と話して用が済んだとみるや、美舞の中からさっと消えた。


   2


「あ、何か。僕、軽くなったみたいだよ」


 美舞は手足をぶんぶんと振って、皆の前ですっかり憑依が取れた事を証明した。


「又、憑依されていたんだね」


 玲が先日の眼の前で見た事を思い出す。


「玲君、さっき言った事は本当だよ」


 玲を見つめた。


「さっきって。さっき?」


 玲ははっとして赤面した。


「そう、さっき。一度しか言わないよ。」


 こんな所はマリアに似ている。


「本当なんだね……」


 玲は感慨に浸った。

 運命だけでは得られない愛がそこにある。


「じゃあ、五年後に約束を果たしてくれるかい……」


「そうだね、五年後に……」


 五年後の結婚を約束して、二人は闘いの勝利と愛のキスをした。


「あ!」


 美舞は自分の今迄光芒があった掌を見た。


「何故かな? あの痣は消えたみたいだよ」


 少し寂しい様に呟く。

 マリアとウルフの痣も消えていた。

 玲には元々痣はないが、力を封じる力があった。

 しかし、今はそれも感じられない。

 四人とも力を失っていた。

 闘いは終わった――。

 この闘いで、美舞はマリアとウルフのかけがえのない両親のあたたかさを知った。

 そして、美舞と玲の二人に深い絆が結ばれた。


「僕、将来について、こんなに感じたことがないよ」


 美舞の素晴らしい笑顔が、何よりも物語っている。

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