プロローグ 戦闘乙女!美舞☆やっちゃった小四
初めまして。こんにちは。
いすみ 静江と申します。
本作は、『星の囁きβ ~ 醒なる美舞☆玲の愛 ~』の「第一部 醒なる美舞」より、手直しいたしましたものとなります。
少しでも楽しんでいただければ、幸いです。
よろしくお願いいたします。
「はああ……! 止めなさい」
三浦美舞は、一人、徳川学園小学部から帰っているところだった。
ベージュの校帽を一目見れば分かる。
丁度、四年生になったばかりで、花冷えもする頃だ。
公園の前が通学路になっており、事件を見掛けた。
この辺では変態と呼ばれているオジサンが、友達を苛めているものだから大変だ。
「助けて! 美舞ちゃん」
無論、闘いを挑むしかないだろう。
「大丈夫だよ。僕は、変態を許しません」
美舞は、日独ハーフで、ぬばたまの黒い瞳と碧眼とのヘテロクロミアを持つ。
徳川小の校帽に、黒の髪を二つに結っていた。
グレーのボーダーTシャツにジーンズも似合う。
ランドセルは、ベンチに置き、ぱっぱっと手を叩く。
かなり小柄だが、どんな敵にもお構いなしと正義の表情で敵と対峙する姿勢だ。
「何をですか? オジサン、何もしていないです。この赤ちゃんみたいな手で、腕を捻るのを止めてくれませんか。ちょっと痛いでーす」
新聞越しに四十歳位のオジサンが、からかって来た。
「パンツを穿かないオジサンは、悪い人です。僕のパバが言っていました。コートを着てしまいなさい」
腕をもっと捻ってやった。
「やっだよ」
バカな。
奴が、あかっんべーをして来た。
「何てことをするんだ。僕の注意はここまでだよ。はああ! もっと捻るけれども、いいのかな」
美舞は、力を込める。
「口うるせえガキだな。ぶっこんじゃいましょうか」
ダンッ。
公園のブランコに、美舞は腹を下にして押し付けられた。
ギイー。
ギイー。
ギイー。
軋むチェーンの音に、美舞はくらっと来たが、そこで折れるような小学生ではない。
「何!」
美舞は立ち上がったが、再びブランコは、重くなった。
「オジサンさ。血走っているけれども、ヤケで僕に勝てないからね」
ブランコごと美舞にのしかかって来た。
「バカヤロー! 俺様は菅田って言うんだよ。分かったか、こんクソガキ、従えよ」
酒臭くはなかった。
シラフだ。
余計に質が悪い。
「ぶっこんじゃいましょうか」
オジサン菅田、強気に出る。
「何をふざけている。どんな事があっても、僕は負けないよ」
ギイー。
ギイー。
「うぐはっ。止め」
美舞は内臓が出そうだと思い、声を荒げた。
「いいや、止めないよ。オジサンは」
「や、止め。止めなさーい!」
美舞の心に火がついた。
パクアア――ドンッドンッ。
凄い閃光が、美舞の左手にある五芒星の痣から出る。
ホウキ星の様に、シャーッと流れた。
「アチャ。やり過ぎたかな」
左手を下げ、右手を伸ばした。
キュイジーンジーン――ドンッドンッ。
右手の六芒星の痣からは、手当ての光りが出せた。
こんな奴だとは思っても火傷は治してあげないと。
「うぐうぐう」
ドサッ。
オジサンは落ちた。
偶然だが、ふさっと被さったコートで、パンツの所が隠れていた。
「やれやれだ」
「美舞ちゃん、ありがとう! 私達、帰るね」
「うん、気を付けて。何かあったら、僕を呼ん――」
そこまで話して気付いたようだ。
「しまった! ウルフパパに怒られるなあ。力を使っちゃった。まずいなあ……」
ぶつぶつ言いつつ、公園を後にする。
「マリアママは、ツンだから、黙るし……」
家に着いたらどのようなお小言があるのか、シミュレーションしていた。
しかし、どう転ぼうと怒られるのは、決まっている。
ビクビクして、帰宅した。
シャラン。
シャラン。
玄関が鳴り、帰宅を知らせる。
海洋のモビールが風を受けてくるくると回って、実に楽し気だ。
けれども、美舞は大活躍をしたにも関わらず、心が晴れない。
「ただいま帰りました。ごめんなさい」
素直に謝る事にした。
この後の心配性ウルフのお説教とツンママのマリアったら大変だった。
美舞は、力は使ってはいけないと深く心に刻んだ。