攻略対象1人目②
池綿 杉くんは、まるで某国民的アニメに出てくるお金持ちのお坊っちゃんのように髪をかきあげた。
肩まで伸びた金髪がきらきらと光に反射する。
キリッとした目に通った鼻筋、形のいい唇は本当にイケメンそのもので、こんなにド派手な外見なのに全然下品じゃない。
本当、顔がいいってだけで人生勝ち組だよなあ…なんてぼんやり思考を巡らせていると、池綿くんは肩を自然な動作で抱いてくる。
「さあ、いっしょに教室に行こうか」
キラリと輝く白い歯を覗かせて、まるで誠くんの存在なんて見えていないかのように歩きだす。
私は慌てて肩から手を払う。
「ちょっと、困るよ!私は誠くんといっしょに…!」
誠くんの方を振り返ると、彼は眉を下げて笑った。
「ごめんごめん、邪魔みたいだな。俺のことは気にしなくていいから、池綿といっしょに行けよ」
そういって足早に教室へ向かおうとする。
違うから!邪魔じゃないから!むしろ邪魔なのは池綿の方だから!!
「まって誠く「うんうん、モブキャラは理解が早くて助かるよ。さあ、澪!遅刻しちゃうから早く行くぞ☆」
パチンとウインクを飛ばして、今度は腰に腕を回してきた。
この池綿め…手慣れすぎでしょ…何人の女を手玉にとってきたんだ悪魔め………
キッと睨んで振りほどこうとしても、ガッチリ掴まれて全く抵抗ができない。
挙げ句「上目遣いも可愛いよ♥️」なんて言われる始末。
そんなやり取りをしている間に、誠くんはその場から立ち去ってしまった。
周りにいる生徒達に、美男美女が揃って絵になるだの目の保養だのキャアキャア騒がれて非常に居心地が悪い。
しかし池綿くんは満足そうだ。
「みんなが俺たちを見てるね。きっとお似合いのカップルだと羨ましがられてるよ☆」
「いやカップルじゃないから!!」
大声で否定する。
池綿ルートになど入ってたまるか。
私は誠くんと幸せになるんだから!!
抵抗できないままでも、気持ちだけはブレずにしっかりもつ。
大丈夫、誠くんは最後まで私を思っててくれる。
誤解さえとけば、ちゃんと気持ちを伝えれば、かならずルートに入れるはず。
決意を胸に、池綿くんの話す言葉を右から左へ流しながら教室へと向かった。