攻略対象1人目
パンも食べ終え、誠くんと雑談をかわす。
最初は緊張していたけど、私は「沢村 澪」と自覚することで、徐々に自然に話せるようになった。
なんといっても今の私は美少女だ。
しかも努力次第で頭も良く運動神経も抜群というパーフェクトな人間にもなれる、凄まじいポテンシャルだ。
私もひたすらステータス上げしたっけ。
完璧に仕上げても攻略対象のキャラと結ばれることはなかったけど。だって…
「澪、ちゃんと池綿とデートしてるか?あいつ落ち込んでたぞ」
私の気持ちも知らずにこんな情報をくれる誠くんに恋をしてるんだから。
あ、ちなみに池綿くんは学園一のイケメンで、攻略対象の中でも人気上位のキャラ。
澪ちゃんのステータスもほぼマックスにしないと落とせない、攻略難度激高な王子様。
ん?でもデートしてないから落ち込むって…
もしかしてこの澪ちゃん、もうステータス高くて勝手にメインキャラに好かれてる状態なのかな…?
「あんまり冷たくしちゃダメだぜ、他のやつからの印象も悪くなるかもしれないからな」
うんうん、そうやって心配してくれるとこが好き。澪ちゃんのことを好きなくせに。健気で可愛すぎる。
…というか、これいっそ今誠くんに告白したら……あっという間に両思いのハッピーエンドで、夢みたいな学園生活を送れるんじゃあ…。
「……ねえ、誠くん……」
私の身長は153cm。
誠くんは175cm。
自然と上目遣いのような感じになって、誠くんはまた顔を赤くした。「な、なんだよ」なんてどもってる。
校門の手前でピタリととまり、二人見つめあう。
初めての告白。
両思いが確定なのはわかってるのに心臓がバクバクと鳴っている。
「あのね、私、誠くんが」
言いかけた時。
まさにゲームのようなタイミングで、大きな声が響いた。
「おはよう!こんなところで会えるなんてとても素敵な偶然だね!これは運命なのかな?」
歯の浮くような台詞。
振り返ると、そこには池綿 杉くんが立っていた。
すごい…ゲーム内での表現かと思ってたのに、本当にキラキラしたエフェクトが見える…眩しくて目が開けられない…