春色
ふと気づいたら結構な遅い時間になってしまっていた。
誠くんが私の家の玄関の前まで見送ってくれる。
「本当は帰したくないんだけど…」
まるで乙女ゲーをプレイしているかのようなときめきがずっと襲ってくる。私のHPはもうゼロに等しい。
今日はもう帰らないと私の魂まで出てしまう。
「おんなじ気持ちだけど、また明日ね!私の命に関わるから!」
「ははっ、大げさだなー。…でもま、明日もすぐ会えるしな。いつもの時間に迎えにいくから。あと」
言いながら、私の体をギュッと抱きしめた。
誠くんの胸に顔を押しつけられ、モガモガと不明瞭な声を出す。
「今日のカッコすげー可愛い!週末のデートでも着てきてな!」
その台詞で、美少女にしか許されない服装をしていたのを思い出した。
嬉しさと気恥ずかしさが混じってそわそわする。
着ている服を褒められるって初めてのことだけど、こんなに嬉しいんだなー。……ん?
「しゅーまつのでーと!?」
ガバッと胸から顔を離し、誠くんの顔を見上げる。
「そ、どこにデートに行くかはまた明日にでも決めような」
そして、そのまま額にキスを落とされた。
なんだもう、誠くんも充分攻略キャラの素質ありまくりじゃんか。
だってこんなにときめろ状態にさせられるんだよ、全然平凡じゃない。王子様だよ。
「じゃあ、また朝にな!」
私が家の中に入るのを見届けて、誠くんは自宅に帰っていった。
現実感がなくて、足元がなんとなくふわふわしている。
怪しい足取りで部屋まで戻り、そのままベッドに倒れ込んだ。
誠くんに触れられた箇所や色々な言葉を思い出してのたうち回ったり、枕をギューッと抱きしめたり、古典的に頬を引っ張って夢じゃないことを確認してまたのたうち回り…の無限ループ。一人でカーニバル状態になっている。
晩ごはんも食べていないのに、胸のあたりに何か詰まっているような感覚で、なぜか空腹を感じない。
あ、これが昔少女漫画で読んだ「胸がいっぱいでご飯が食べられない」…!?
…なんて浮かれてばかりもいられない。
ちゃんと池綿くんとミロくんにも気持ちを伝えなきゃ。
全てのケジメをつけてから誠くんとこうなるべきだったかな、と罪悪感はあるけれど、もう今さら言っても仕方がない。
明日からの生活も、皆との関係も、沢山気になることはあるけれど……
どうせ今日のテンションじゃ良い考えは浮かばないから、考えるのをやめた。
億劫だったけど、どうにか起き上がりお風呂に向かう。
一旦頭の中を空っぽにして、今日はもう寝てしまおう。
明日のことは、明日頑張る!




