耳に飛び込んだ現実
間違いない。
この部屋を私は何度も何度も見た。
「どんな部屋だよ」「今時こんな部屋に住む女がいるか」と冷静にツッコミながら。
もちろんこの美少女も私は知っている。
私と共通しているところは高校2年生というところと性別のみ、そんな私の分身。沢村 澪。
「これ…あれだ………異世界転生的な…あれだ………」
現実的に考えて有り得ないし、到底受け入れがたいことなのだが、私はなぜか驚くくらいこの状況を理解していた。
だって、私は元の世界に未練がない。
両親は出来のいい妹を溺愛し、容姿が可愛くもなければ愛想があるわけでもない私のことなど特に気にすることはなかった。
口下手なせいで仲のいい友人もできず、恋なんて私なんかに好きになられたら可哀想でできなかった。
ただひたすら、家と学校を往復して、日々をこなすだけ。
ときめき☆めろめろ…ときめろだけが、私の心の支えだったから。
私を認めてくれて、支えてくれて、好いてくれる。現実で欲しいものを全部くれた、誠くんが本当に大好きで。ヒーローで。
そんな彼が幼なじみな澪ちゃんが…うらやましくて…
…だめだ、色んな感情が渦巻いて涙でそう。
軽く鼻をすすったその時。
何度も聞いたあの声が聞こえた。
「おーーい!澪ーーーー!また寝坊かーーーー!?」