そういうところが
「あーー!やっと終わったーーー!」
ガヤガヤとざわめく教室でもはっきり聞こえるくらいの誠くんの声。
とくに注目されるわけでもなく、モブキャラ達はそれぞれの行動をとる。
そのまま帰路に着く人、部活へ向かう人、友達と談笑している人。
今さら、モブとして登場している人達にもそれぞれ人生があって、自分の道を歩んでいることに気づく。モブキャラ、なんて呼ぶのは失礼だな、なんて反省する。
いやそもそも私こそモブもモブ、モブ界の王を名乗っていいくらいの存在感のなさで…本来なら攻略対象どころか誠くんと幼なじみを名乗ることすら罪深いというか…生きててすみません……
「……ぉ……みお……みーーーおーーーー!!」
耳元で叫ばれた私の名前で我にかえる。
少し耳がキーーンとして、眉をしかめて誠くんを見る。
誠くんは片手を顔の少し前に持ち上げてごめんのポーズをした。軽いウインクつき。
これを目の前で見て許さない人間いる?いやいるわけがない。いるならそいつは人間とは認められない。
「お前ずーっと下向いて意識どっかに飛んじゃってんだもん。熱でもあんの?」
そう言って手のひらを私の額にピッタリと重ねてくる。
大きな手のひら。私の柔らかい手とは違う、筋ばった男の子の手。
冷たい手のひらを、私の急速に熱くなった額が温めていく。
「うわっ、すっげえ熱いんだけど!?風邪どころかインフルに…」
「あーー!ないから!体調いいから!私もともと体温高いの!」
「でもこれ…」
「大丈夫だって!」
恥ずかしくて、誠くんの手を少し雑に振り払ってしまう。
対して誠くんは特に気にすることなく、ほんとか?と疑いの眼差しを向けてくる。
やばい、とても目を合わせらんない。
きっととんでもない表情してるもん、私。
「澪は頑張りすぎるとこあるからな……心配だから送ってく。一緒に帰るぞ」
……誠くん……好き…。
好きすぎる…尊い…優しい…好き…。
完全に語彙力を失い、思考も誠くん好き好きで埋め尽くされる。
そんなポンコツの私の腕を引いて、気づけば誠くんは教室を出て校門まで誘導してくれていた。
ちゃんと、私の歩幅に合わせて、ゆっくりと。
そんなところにも彼の優しさを感じ、胸がときめきでいっぱいになる。
そして、幸せな下校タイムがスタートした。
そう、この時の私は気付いていない。
もう一人の攻略対象とのイベントが、帰宅途中に起こることに…。




