末路
家を出るとき女房に会社から帰る途中殺鼠剤を買ってきてと言われた。
何でも都内でネズミが異常繁殖しているらしく、マンションの地下駐車場でもネズミを見かけるとの事。
地下鉄の駅に着き改札口を通り長い階段を下りホームの前に滑り込んで来た電車に乗る。
若い女の子の後ろに立った私は女の子の尻に手を伸ばす。
女の子の尻を堪能していたら尻を撫でていた手が突然ねじ上げられ罵声を浴びる。
「女の子が嫌がっているだろうが、屑野郎!」
大学生らしい男に手をねじ上げられたまま電車から引きずり降ろされた。
警察に引き渡されたら身の破滅。
私はねじ上げられていた腕を振りほどき、ホームの先端でトンネルの奥を懐中電灯で照らしている駅員や、その周辺で何かを撒いている作業員等を突き飛ばし電車が抜けて来たトンネルの奥に走り込む。
「そっちに行っては駄目だ!」
「戻って来い!」
後ろから駅員や作業員の声が聞こえたが知ったこっちゃ無い。
1ツ前の駅を目指してスマホの明かりを頼りに線路脇をトボトボと歩く。
スマホの明かりに血塗れのレールと轢き殺された沢山のネズミの死体が照らされた。
スマホの明かりが届かないトンネルの奥からネズミの鳴き声と思われる、キーキーと言う音が響いている。
私の目にトンネルを埋め尽くすネズミの集団が映った。
ネズミの集団は私に襲い掛かり身体を喰い始める。
「ギャアアァァァァー!」
断末魔の悲鳴を上げた私が最後に見たのは、線路内を駅の方へ進んで行く凄まじい数のネズミの大群だった。