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if 明治興亡記  作者: 高田 昇
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第四十八話:南山総攻撃

 鼓膜を痛めるほどの轟音と共に砲弾が地中を抉り、大量の土砂が中に飛び散る。一度ならず、何百何千の砲弾が空中を飛び交う。南山の周囲で日露両軍の砲兵による大砲撃戦が繰り広げられていた。


 敵堡塁から約50mの交通路の塹壕を確保した各部署の日本軍歩兵部隊は、降りかかる土砂を被りながら砲撃が止むのを待っていた。帽子や肩には土砂が積もり、埃が舞って目や鼻がやられてしまう。彼等は、砲弾に対する恐怖心に慣れていて、突撃の時を待った。


 時折、砲撃が弱まったのを見計らい、兒玉白朗は双眼鏡で山頂を覗く。ロシア軍陣地は、砲弾の着弾による煙りと土埃が立っていて敵にどれだけの損害を受けたのかは評価できない。


 再び、砲弾の飛翔音が聞こえてきた。身体を伏せてから暫くして、大きな飛翔音を伴った砲弾が付近に着弾して爆発した。熱風が身を潜める背中を通っていく。それから砲撃戦の音が響き渡るが、周囲に砲弾が落ちて来ることはなかった。先程よりかは砲撃の音が少ない。


 連続で響いた飛翔音も、次第に数を減らしていく。暫くすると砲音が鳴り止み、最後の砲弾の飛翔音だけが周囲に鳴り渡る。日本かロシアの放った砲弾の音が地上に落下音が段々絞られていく。その音が切れたと同時に地面が爆発し、地鳴りが起こる。


 両軍の砲撃が止んだ。白朗が再び、塹壕から身を上げて双眼鏡で敵陣地を覗いた。土埃は止んでおりロシア兵の姿が見当たらない。日本軍の砲撃で怯んでいるかもしれないが、見当がつかない。


*****


 中隊本部かららっぱが力強く鳴った。『突撃』の号音だ。同じメロディーが二回流れて止んだ。


 「第3中隊は敵堡塁に向け突撃する!」


 聞き慣れた中隊長の声が遠くからはっきりと聴こえてきた。


 「第1小隊、目標、前方堡塁、躍進距離50!」


 と、白朗も力強い声を上げて小隊隷下の分隊長に目標を示した。同時に中隊の各小隊長も同じ様に攻撃目標の指示を出していた。塹壕に潜んでいた下士官、兵卒たちは、その集中を指揮官の言葉に向けていた。


 「突撃!」


 将校たちは腰に吊るす軍刀を抜き、敵方に向けて叫んだ。


 武器を持った男たちが声を高らかに上げて我先と塹壕から走りだし、敵に向け突進していく。それは、南山を囲む全日本軍の歩兵部隊が一斉に攻撃を開始した。


 カーキー色の軍服を纏った人間たちが南山に登り上がる光景は第2軍司令部から観測できていた。その、山頂に登り上がる人間たちが突如鳴り響く銃声音によって大勢がバタバタと倒れていく。

今後、執筆文字数を1000文字前後として話を投稿していきたいと思います。

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