夜
ほとんど宴の夕食会を終えたのは、日が沈んでかなりの時間が経ってからのことだった。
そこで料理を振る舞ったマノンは色んなオジサンたちから声をかけられていて、戸惑いのあまり俺の後ろへ隠れていることが多かった。
それでも最後まで人前に居続けたというのは、過去の彼女の言動からは考えられないことだ。たっぷり疲れているようでもあるし、本当によく頑張ったと思う。
「ハヤトくん、テントに行くよ」
「ん。……おう、そろそろ寝るか」
「頑張って酔っ払ってないフリしてるみたいだけれど、結構お酒臭いわよ。もうっ、弱いのに沢山飲んじゃって!」
「いや、そりゃまあ酔っちゃいるけどさ。俺は酒に弱くないぞ」
「前に一杯で寝ちゃったじゃない。忘れたの?」
「あれは…………」
そういえば、なんであの時の俺は、寝るほど酔ってしまったのだろうか。
結果的に膝枕をしてもらえたし、レイフさんやヤマさんの事情に入り込むことになったから、お座なりになっていたけれど。
お酒の強弱ぐらいは味と飲んだ直後の『利き』でわかる。
正確なことまではわからないけれど、町の酒場で提供されるカジュアルな酒をグラスで飲んだだけでは、寝るほど酔わないだろう。
客を一発アウトにしていたら、店が損をするだけだ。
――軽くふらつく足取りをどうにか正して、テントまで歩く。
「――じゃ、また明日」
「うん。ハヤトくんもマノンちゃんも、ゆっくり眠ってね。サラも、ちゃんと横になるんだよ」
そう言い残して小さく手を振ると、リルは自分の名前が書かれたテントへ向かって歩いた。
俺たちのテントは四人分、それぞれ四つ。全てに名前が振られている。
他の人たちはほとんどがすし詰めのような状態で雑魚寝のようだから、本当に賓客の待遇だ。
だが、少し気にかかるな。
「サラ、一人で大丈夫だな?」
「はい」
完結に答えたサラも、自分の名前が書かれたテントへ向かう。
いつこの世界へ置き残すことになっても自分の名前ぐらいは読めるようにと、遊びながら字を教えたんだ。中々に飲み込みが早くて、教え甲斐もある。
しかしゲーム世界という特殊な場所から召喚されたサラは、自由に睡眠が取れないそうだ。プレイヤーは深夜だろうが明け方だろうがお構いなしだから――と。
だから、はじめて出現した日に眠り込んだのは恐らく、バグやフリーズの類いなのだろう。それだけの条件は揃っていた。
――そうして残った、俺とマノン。
本来ならマノンにもテントへ向かわせるところだが。




