表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/130

マノン③

「――ちょっ――ぉ、なんで!?」



 マノンが俺に(のろ)いをかける理由なんてないはずだ。

 いや、パティに証明するためか!?


 なら早いところ解いてもらわないと――――!

 俺はそれを伝えようとした。だがマノンは不敵に笑っている。



「ふふっ――、ふぇっ、ふぇっ、ふぇ――ふえふえふえふえふえふえふ」



 えっ、なにその笑いかた!? ちょっと(こわ)いんだけど!!

 俺が割と本気で引いていると、マノンは腕を組んで堂々と言い放つ。



「日本での引きこもり環境を聞いて、()がしては置けませんよ!!」



 ちょ、別人みたいになってるんですけどぉ――っ。



「ふぇっ、ふぇっ、ふぇ――。これでお兄さんは、私を放っておけないはず。ふえふえふえふ」



 ――いや、冷静になれ。俺にはライカブルがある。

 マノンの好感度は高いままだ!



「で、でもさマノン、マノンは俺のこと、嫌いじゃないだろう?」


「…………私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い私は英雄様が嫌い」



 凄い勢いで好感度が下がっていらっしゃる!

 自己暗示というやつか!?



「さあ、どうしますか英雄様? 死ぬよりはロリコンだと思われたほうがマシじゃあないですか? ふぇっ、ふぇっ」



 ヤバい。こいつが一番危ない。ジジイよりネトラレヒロインよりよっぽど怖い。



「早く私と日本へ行きましょう? そして私を養うのです」



 日本で引きこもる――――。ただそれだけのために俺の命を握りやがった!



「引きこもる気満々の奴を連れて帰れるか!! 俺にそんな()()(しよう)はねえよ!!」


「英雄様になくとも、ご両親にはあるでしょう?」


「発想が恐ろしいわ!!」



 こいつ、幼気な顔でなんてことを言いやがる。



「死んだと思っていた(むす)()が幼女を連れて帰ってきた。でも幼女は身元不明。――息子のために隠しますよね? 私、堂々と隠れられますよね?」


(あく)()かお前は!?」



 なんでそこまで頭が働くんだよ!


 純真な子供、可愛い妹みたいな子だと思っていたのに――っ。



「私、珍しく外出する気になりました。城へ行って『ネトラレヒロイン』と『ロリヒロイン』、どちらが良いか決着をつけましょう」


「なにその嫌すぎる二(たく)!? ――あっ、そ、そうだ!! おいパティ、マノンの魔法を解くなら問題ないだろ!?」



 マノンは王族ではない。上下関係的に言えばむしろ、賢者より(はる)か下に当たるはずだ。

 だがパティは(せん)(りつ)に身を(ふる)わせた表情で、こちらを見ている。



「パティ!?」


「嘘……。全然、解けない…………。……修練を積んだ私が…………賢者の、この私が…………。ただの引きこもりの子供に負けている………………と?」


「おいマジか!? マジで言ってんのか!?」



 問いに答えたのはマノンではなく、国王だった。



「ハヤトよ。マノンは魔法の才に関してだけは王族を(しの)ぎ、その力は国をも(ほろ)ぼしかねんのじゃ。頭の回転も速い。じゃからワシも学校へ来るよう()()()いはできず…………の?」


「の? じゃねえぇぇぇっ!! なんで国王が庶民の子供に(おび)えちゃってんの!?」


「だって、呪われたら怖いじゃろ?」


「じゃあ先に言えぇぇぇぇぇぇえッ!!」



 それでマノンだけネトラレ属性を叩き込まれることもなく、そこそこの生活しかできない、つまり子供でも多少働く必要があるような国の庶民でありながら引きこもれているわけか。

 (なつ)(とく)したくないけど、したよ! できちゃったよ!!



「もう俺じゃなくて、マノンが(ちから)()くで大陸制覇すればよかったんじゃねえの!?」


「馬鹿を言うな。五年前のマノンはまだ九(さい)じゃ」


「ってことは、今は十四かよ……。もうちょい下に見えてたぞ…………」



 色んな意味で恐ろしい。

 俺はマノンへ顔を向け直して、その顔を直視する。

 目鼻立ちは確かに、ここから幼さが抜けていけば好みになりそうだ。


 だが性格に問題がありすぎる!!


 果てなく困り続ける俺に、マノンはちょこんと小さな背を更に小さくして(かが)んで、可愛らしい()(がお)で言った。



「一生、(めん)(どう)見てくださいね♪」



 最悪のプロポーズだ…………。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ