三人の新居③
城下町の外周にほど近い、閑散とした場所。
そこに、ぽつりと一軒。平民の家としては少々立派すぎだけれど、貴族の家としては壁で囲まれているわけでもなく平民寄りすぎる解放的な造り。
ヤマさんらしいなぁ、と思える家が建っていた。
「大きいけど、可愛い家ねぇ。こんな立派なところを借りちゃって、本当に良いのかしら?」
「どうにか家賃ぐらいは払えるようになりたいな。しかしなんか、少しメルヘンすぎないか」
「窓が多い……」
三角屋根の上に日本でいう風見鶏が立っていて、庭には沢山の綺麗な花が咲いていた。
ただ手入れは多少必要な印象だ。
芝は丈が十センチ近いだろうか。芝刈り機なんて便利な機械はないわけで、芝の手入れは手作業となる。
「よっしゃ。早速、中に入ってみようぜ」
俺たちはレイフさんから鍵を預かった。備え付け以外の家具は全て持ち出しているから、この家は現状をそのまま使っても良いとのことだが――。
「5LDK。水回りは整っているし、家具が足りないだけですぐに住めそうだな」
「まずは床と壁、それから窓ね」
リルが腕まくりをして、さっき発見したバケツと雑巾を手にしている。
ほんと働き者だな。
「――って、マノン。お前までどうした?」
「なんですかその『マノンは汚くても住めるだろ?』みたいな顔は!!」
「いや、だって引きこもってたからさ。引きこもると部屋とか汚れるだろ」
「私は快適な環境を求めて引きこもっているのです! なんでわざわざ汚れた部屋に引きこもらなければならないのですか!」
「う……。一理あるな」
昔の俺よりも立派な引きこもりである。
『ハヤト、部屋掃除するわよ』
『うるせーババア』
『どうせそんなこと言って、自分じゃ絶対に掃除しないんだから……。ん、なに? この黒いノート。ええっと、DEATHNO』
『出て行けババァァァァァーッ!!』
…………俺は日本に帰ったら、まず母ちゃんに土下座すべきだな。
あと、死の魔法とか使えなくて良かった。
………………というか、俺に比べてマノンの引きこもりって超健全じゃね? こいつ炊事できるし、掃除も怠ってないみたいだし、引きこもる理由が外部圧力で『引きこもれ』とされたわけで。
まあ俺は、引きこもりを脱出しないとなぁ、という気持ちが強くて、マノンは『一生引きこもりたいでござる!』の状態だから、単純な重症度で言えばマノンなんだろうけれど。
「じゃ、俺は庭の掃除をやってくるよ。あっちのほうが体力勝負だろうからな」
のんびりまったり生きていたい人間だけれど、忙しく働く二人をガン無視してくつろげるほど傲慢でもないわけで。
家の中にあった手袋を装着。質感高い両開きのドアを開けて庭に出て、まずは雑草の駆除作業に勤しむ。
まずは家の外周から……と思ったところで、植樹されたこの家のシンボルツリーの周りに大量の『きのこ』が生えていることに気付いた。
「きのこ――ねえ」
そういえば王城の地下牢に一人、置き忘れてきたな。
サラマンダーのサラ。
彼女には国を混乱に貶めた罪が背負わされているわけで。放っておいたら処刑されてしまうだろう。
まあドラゴンが元の体だから、そう易々と殺されるものなのかは疑問だ。
とは言え、人の体のときに首を落とされたから易々と死にました、なんてあとで知らされる可能性は、万が一であっても消ししておきたい。




