サラ① とらわれ
城に帰って、サラマンダーの『サラ』と会う。
「ご主人様?」
…………鉄格子、越しに。
「あーあー、酷い扱いだな」
「きのこ、沢山食べた」
「そりゃ良かったな。……けど、こんな環境じゃ落ち着かないだろ」
王が退位を表明したことで、王族の一部が反発。
特にぶよぶよの一件とサラマンダー騒ぎは収めることが叶わずに、サラは地下の牢へ閉じ込められることになった。
重罪人と同じ扱いは酷すぎるだろうと俺とリルは抗議をしたのだが、城を騒がせた時点で重罪とのこと。ほんと、この中世世界は嫌いだ。
「今までより、ずっとマシ」
「今まで……って、この世界に来るまでは、どうしていたんだよ」
ゲーム内での記憶があるってことか?
「サラマンダーより、ずっと、はやい! ――――ほとんどこの言葉の中で、私は生きてきました」
「…………ごめん。もうちょっと噛み砕いてもらえないか?」
「私は人間の創作物でしたから。人々に伝承される中で生きていたのです。忘れられることが死を意味します」
「あー……。まああのゲームでサラマンダーって言うと、そのシーンばかり語られるかもなぁ」
不憫すぎる生き方である。
「でも、あのゲームではドラゴンの姿しかなかったんじゃないのか?」
「はい。ですが召喚の際に、女の子の情報が沢山流入してきました……」
心当たりがありすぎる。
召喚には集中力と脳内イメージが重要だと知った俺たちは、爺さんの頭の中を精一杯かき乱したわけで。
いっそ純粋な女の子が召喚されてしまえば――という思いだったけれど、まさかドラゴンと女の子、二つの面を持つ存在が召喚されてしまうとは。
「サラはこの環境に、不満はないのか?」
「一つもありません。きのこを頂けますし」
困ったな……。不満たっぷりだろうから、どうにか出してやろうと思っていたのに。
本人に不満がないのなら、このままというのも『あり』になってしまう。
「……じゃ、今度は俺がきのこを持ってきてやるよ」
「本当ですか!?」
おっ、急に抑揚に富んだな。
「ご主人様の、大きなきのこ……っ」
「やめろ。確実に誤解を招くから、マジでやめろ」
地下牢を守る兵がゲスいものを見る目でこっちを……。この誤解はしっかり解いておきたいところだ。狭い城内で噂が広まる速度というのは恐ろしいものがあるからな。
――それにサラのことは、俺一人で抱え込むことでもないだろう。
本人が満足していて身が無事であり続けるなら、とりあえず、急ぎではないのかもしれないし。でも――。せめて大きなきのこの一つぐらい、ちゃんと採ってこよう。




