表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界帰りは寝取られ令嬢と共に。 ~命がけで頑張ったので、ただ可愛すぎるだけの人はお断りします~  作者: 本山葵
王位継承編① ヒロインをかけてヒロインと戦うゲーム
49/130

王位継承方法

 朝食の席で、国王が自ら語り出した。


「昨晩、中央区に在籍する全ての賢者と話し合った」


 その一言で王位継承の話だと察した俺とリル、マノンは、食事を口へ運ぶ手をピタリと止める。


「――それで、どうなったんだ?」

「まず退位が決まり、早速、今日付で告知されることとなった。そして王位継承の方法は、ワシの最後の仕事として一存で決定させてもらった」


 国王の最後の仕事が、次の国王の決め方――か。

 爺さんとかジジイとか呼んできたけれど、ここ五年の俺は、この人を国王とした国で活躍したわけで。爺さんが国王じゃ無くなるというのは、ほんの(わず)かに寂寞(せきばく)の思いもある。

 あくまで、ほんの僅かに、だけど。


「お祖父(じい)様、どのような方法で次の王を――」

「総選挙じゃよ。身分も老若男女も問うことなく、大陸中の全ての国民へ一票を投じる権利を与える」


 総選挙って……。この爺さん、日本のアイドルに()まっていたりしないだろうな?

 まあ、そうだとしても、ジャンケン大会とか言い出さないだけマシか……。国王をそれで決められたら洒落にならなかった。


「立候補の権利者は、全ての王族と、王族をも(しの)ぐ魔法の才を持つマノン。そして十字大陸統一の英雄である、ハヤト。――例外は一切認めぬ」


 なるほど。納得のラインナップだ。

 王族は元来(がんらい)の権利者であり、魔法の才に従って決めるというルールならばマノンを外すわけにはいかない。

 つまり最たる例外は俺であり、むしろ異世界人の俺を加えてくれたことには、いくらパソコンという対価を払うと言えども、感謝しなければならないだろう。

 ただ――。


「いいのか、爺さん。俺は国王が国王になったところで、すぐにトンズラするかもしれないんだぞ」

「過去の国王には、在籍期間が一日に満たない王もいるほどじゃ。まあ、暗殺によるものじゃが、の」


 の、って。

 物騒だな……。武器を使った暗殺なら抵抗はできるけれど、毒殺は見抜くのが少し難しくなるし、さすがに大軍で押し寄せて全力で殺しにかかられたら、俺のスキルだけでは逃げ切れないかもしれない。

 選挙ならば、仮に最少人数であるリル、マノン、俺の三人で票をわけあったとすれば、三十三パーセント強での当選があり得る。

 残りは反対票を投じているわけだから……。

 これは、しっかりと権力者と国民の納得を得なければ、ガチで殺されかねないな。じゃなきゃヒロインを先決めした上で、俺が民意を得て国王になるか。


「選挙……」


 リルは不安そうな顔をしている。

 王族の中には領土や軍の師団(しだん)、家臣を持つ者が多くいる。しかしリルは裸一貫(はだかいっかん)の状態。王族同士で争えば最後尾からのスタート間違いなしだ。

 領土持ちが選挙に参加するというのは、公平なのかどうか疑いの余地がある。

 けれど、それを覆すことができないようなら、王の座につく権利など無い――――。そういうことだろう。

 無論、マノンと俺も、裸一貫だ。


「ふぇっふぇっふぇ。これは私の勝ちですね。人間なんて、(おど)せばイチコロ。ふえふえふえふ」


 こうしてインチキ臭い武器を持つ奴もいるからなぁ。しっかりと公正な選挙というわけには、いかなさそうだ。

 しかし、ここにきてマノンの強大な魔力と脅し癖が、敵になるとは……。

 こいつは自分が国王になったところで、俺が同意しなけりゃ事態はどうにも動かないってこと、気付いているのか?

 十四歳じゃまだ、わかんないかな。

 俺の心さえも力でどうにかできると、本気で思っていそうだ。


「となると、俺とリルが一番不利――か」

「いや、最後尾スタートはリルじゃろう」

「なんでだ?」

「ハヤトには五年にわたって軍を指揮した実績がある。当時の国軍在籍者が票を投じる可能性は十分にあり、英雄へ憧れを抱く者も少なからずおるじゃろう」

「そいつらが自由に投票者を選べる保証は?」

「人間の意思までは束縛できぬ。ワシにできることは、投票の不正を許さぬことだけじゃ。しかしその一点に関しては、ワシと十二人の賢者が保証しよう」


 例えば領主の命令などに民衆が従ったとして、それは制御できない――――と。

 まあ、そりゃそうだ。仕方がない。

 でもなぁ。俺の率いた師団はすでに解散済みで、会話を交わしたことのある人というのは結構限られる。さすがに全員と仲良くなんて、なれるわけもない。

 まあライカブルのおかげで、反乱の可能性がある人を事前に見抜いたりとかはしてきたから、(おおむ)ね良好な関係は気付けていたけれど――。

 ヤマさんのような一部を除くと、結構、広く薄くになっちゃったんだよなぁ。


「それでも領土持ちには勝てないな。それに、金銭で票を買収する可能性もある」

「買収行為は違反とさせてもらった。どの程度の効果があるかはわからぬが、何もしないよりは抑止になるじゃろう」


 何もしないよりは――。この国、結構上が腐ってるからな。

 権力者の違反は違反じゃない。そんな風に考えて堂々と買収行為がまかり通る可能性は高い。


「結局、現王族の上澄みが有意。逆転の可能性が高いのは金にも力にも屈しないマノンってことか」

「そうかもしれぬ」

「そもそも俺には魔法の才がない。つまり、本来の王位継承権から一番遠い。そのマイナス分を考慮すれば結局、ほとんど丸腰に近い」


 国王へ向かって俺の不利を訴えたつもりだったのだが、応じたのはリルだった。


「――いえ。それでも最後尾スタートは私です。私は……、マイナスしか、ありませんから」


 王族としては最下位で、嫌われ者。

 そして王族を嫌う国民が多い。

 ……確かに、これは不利すぎるな。


「よしっ、じゃあリル。俺としばらく共闘しようぜ」

「共闘……?」

「俺が思うに、リルには国民から好かれる要素が多くあると思う。品がよくて低姿勢で、そして幼少期とはいえ平民だった過去があるからな。そこから国王の座を射止(いと)めるシンデレラストーリーに票を投じてくれる可能性があるわけだ」

「しんでれら……?」

「平民の気持ちがわかる王様なら、平民は喜ぶだろ? ってこと」

「まあ……。そう、かもしれません」


 いや、この国の王政に対する不満は根が深い。

 そういう意味で考えた場合、リルは大きな爆発力を秘めている。


「俺は英雄としての実績を強調するしか、勝つ手立てがない。一人で行動すれば押し売りのセールスマンみたいになってしまうだろうからな」


 英雄へ清きご一票を!

 相手は領土や金を持ち、人の上に立つ人ばかり。これだけで勝てるわけがない。


「それに平民はともかく、貴族や王族には取り合ってももらえないだろう。リルと行動を共にすることで、そのハンデを捨てられるかもしれない」

「こんなことを訊くのは本意では無いのですが……。ハヤトくんと行動を共にすることで、私の得られるメリットは?」

「お前が立候補して、もし目立ってきたら――。きっと他の王族は、面倒だからサックリ抹殺(まっさつ)しようとすると思う。つまりまあ、身を寄せ合って守り合いましょう――ってことだ。ボディガードだと思ってくれてもいい」


 リルは数秒の間、考え込んで、ゆっくりと深く(うなず)いた。

 念のため、マノンの表情も(うかが)う。

 このヤンデレロリッコがどう反応するか……。


「どうぞご自由に。私の勝ちは決まっていますので」


 自信満々だな。

 こいつに弱点があるとすれば、考えの甘さ、社会経験の異常な少なさ――だ。


「決定だ。爺さん、俺とリルは一時的に協力関係になる。これは違反行為とかじゃねえよな?」

「自由の範囲内じゃ」


 そうして朝食を食べ終えると、散会となり、すぐに国王退位の告知文が城下を駆け巡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ