表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/130

朝食

 (ごう)()な朝食を頂くのは嫌いじゃないけれど、好きでもない。

 この落ち着いた落ち着かない(ふん)()()――。

 朝なんだから、景気づけにもっと()()(あい)(あい)としていたってよかろうに。


 ちなみにマノンは(ばく)(すい)中で、同席しているのは国王、リル、パティ、俺。さっきと()わらないメンバー。

 マノンの食事は全て部屋まで持っていくそうだ。もうルームサービスには別料金を付ければいいと思う。


 それにしても落ち着かない俺とは対照的なもので、賢者たるパティは()()(はら)っている。王族のリルに至ってはさも当然のように(ふる)()って、さすがは王族令嬢――と(なつ)(とく)させられた。


 食べ物を口に運ぶなんていう生物の原点みたいな所作ですら、気品が(あふ)れる。

 その魔法のような()(りよく)は、日本で(しよ)(みん)として育った俺には当然身に付いていないものだ。



「なあパティ、お前よくこの落差についていけるな」



 しかしパティとは一緒に旅をした仲で、この間まで火で(あぶ)った獣の干し肉に固いパンという、ワイルドな朝食を済ませていたわけだ。

 師団を率いていたから調理担当者は当然いたけれど、旅の道中で腐りやすい生肉や水分の多いわやらかいパンなんて、出るわけがない。熱を通せるスープ類だけは、まあ、飲めたけれど。その程度だ。

 それが城に帰ると()(たん)にこの生活。

 堂々と(ゆう)()にしていられるのを見ると(みよう)な気分になる。



「どうした、ハヤト。何か不満でもあるのかの?」


「いやぁ……。朝食ってのはもうちょっと()()(あい)(あい)というか、(あわ)ただしかったり、一日の始まりに()(さわ)しい感じでも良いんじゃねえかな……と。そう思ってるだけだ」


「ほう。確かにこれでは、パンを(くわ)えて曲がり角でドンッ――という王道展開には()()めぬな」



 この爺さんが日本から取り寄せた品々を今度(すみ)(ずみ)までチェックしてやろう。王道と言っても意外と無いからな? そういう作品。



「そんなこと期待しちゃいないけど、()()にもプロの料理人が全力で作りましたって感じじゃ、朝から気が張って(つか)れるんだ。手作り感ゼロっていうかさ」


「其方は、そういった朝食の席が希望だと申したいのか?」


「ああ。こういうのはあんまり()()まない」



 ……と、ここまで言って気付いたけれど、俺はこうしてリルを始め養成学校の女性全員へ(めい)(わく)をかけてしまったわけだ。


 日本の食生活が(こい)しすぎるのかもしれない。

 ()()(しる)とかおにぎりを食べたら多分、うぇんうぇん泣くと思う。



「なるほどのう……。言われてみるとハヤトが城へ帰ってくるのは旅の()(ちゆう)の報告のみ。いて三日、というところじゃったか。馴染まないのも仕方がない。しかし今回は、長期に(わた)る可能性もある」


「そういうこと。如何にも中世らしい(けもの)(にく)と固いパンで生き()く自信はあるけれど、この貴族生活を長続きさせる自信はない。――つうか、日本に帰ることを考えたら落差が激しすぎる。うちは普通の家庭なんだ」



 俺は(ぎよう)()が悪いほうじゃ無いと自負しているが、あえてテーブルに(ひじ)をついて()(だる)く振舞った。このほうが不満が伝わるってもんだ。


 そして食事中にこうして国王が会話する、それも相手がため口で――というのは原則的に()(はつ)()なのだろう。周りで待機している侍従や料理人、(しつ)()が明らかに不満そうな顔をしている。


 王に直接()れるような立場の人間は、位が高い。

 そんな彼らから見れば英雄なんて、ポッと出の成り上がりみたいなもんだ。異世界人となれば(なお)(さら)である。それが王とこんな調子で会話をしていたら、そりゃあ良く思わないだろう。

 侍従以外の好感度もすぐに底を付いた。


 俺の態度に問題があるのは重々承知というか、今この場に関しては無礼な()()いをわざと演じているわけだけど。

 こうして一気に底を付くってことは本当に王を敬っているのか、それとも自分より上に立たれて気分が悪いのか、どっちだろうねぇ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ