エピローグ
2020年3月1日~ 改稿作業中です。
大規模変更はないのでそのまま読み進められますが、現時点の改稿終了部分を該当話のあとがきに記します。
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東の最果てにある国との和平交渉が成立したことを、国王へ報告した。
城の通路にあるガラスのない窓から夕暮れの城下町を見渡す。
ゆっくりと人が流れ動く足音。
雑談に花を咲かすおばちゃんたちの、少し掠れた声。
店の呼び込みや値切りをする客の喧噪。
一日を全力で満喫する幼い子供たちの声は生気に溢れ、天高く響く。
全てが混ざって町の音になる。
「日本に帰ったら、どうなさるのですか」
隣で一緒にその光景を見る女賢者は、感慨深げに訊いてきた。
「……俺、裁判官になりたいんだ。この世界で言う賢者みたいなものだな」
「なれそうですか?」
「どうだろうか。この世界で費やした時間は返ってこない。今から日本に帰って勉強し直したとして、大学を受験して、弁護士資格を取って……。ちょっと難しいかもな」
オレンジ色に染まった空と薄く瞬き始めた星を見上げて、苦笑いをして見せた。
「なれますよ。ハヤトさんなら」
目を見詰めながら言われて、今度は照れくさくなって笑ってしまう。
いつまでもこんな時間が続くのも悪くない。
でも、この時間は必ず終わる。
――――そして俺は、日本へ帰るんだ。
約束の報酬。『ヒロイン』と一緒に。