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鉄と真鍮でできた指環 《1》 ~学院の賢者~  作者: とり
 【本編】第7幕 人をさがして
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s-8.アスモデウス




 ・サイド・ストーリーです。内容は、『あかねに魔法をつかったときの、比奈子ひなこ心情しんじょうです』(※サイド・ストーリーは、読まなくても、本編をつづけて読むのに、さしつかえはありません。)









 (あかね)と初めて会ったのは、比奈子(ひなこ)が十才の時だった。図書館(としょかん)で、明日の予習をしている時に、「何で勉強するの?」と茜に()われたのがきっかけだった。


 この質問には何て答えたか、比奈子はもう忘れた。


 「ゆめのため」とか、「ちゃんとした大人になるため」というような、紋切(もんき)(がた)の返事をしたのではないか。と、ふと思い返すことはある。けれど、比奈子には目標もなければ、目指すべき『大人(おとな)』という(ぞう)もなかった。


 図書館での出会い以来、茜とは遊ぶようになった。比奈子はウワサていどに、彼女のことを知っていた。この(とし)賢者けんじゃ就任(しゅうにん)した、神童だった。きっと、友達(ともだち)と呼べる人なんていないんだろうな、と思った。


 賢者と仲がいいというのは、まわりからの顰蹙(ひんしゅく)を買うのに、十分(じゅうぶん)な『社会的地位(ステータス)』だった。のちに起こった落第の一件も、その報復なのだろう。


 比奈子(ひなこ)(あかね)と賢者の屋敷で遊び、練習を見てもらったりしながら、考えた。


 なぜ、勉強をするのか。


 茜はその答えを、知っているような気がした。



 ~~~~~~~~~~~~~~~



 六十六層に転移した時、比奈子(ひなこ)はようやく、運が向いてきたと思った。そしてその幸運(こううん)こそが、これまでの努力の賜物(たまもの)だと信じた。魔物(まもの)はいなくて、一本道で、深層(しんそう)であるにもかかわらず、とんとん拍子(びょうし)にすすんでいく(みち)のりに、警戒をわすれた。欲しかったものが手に入る時が来たのだと、導かれるままに歩いた。


 わなだった。


 大きな土の人形が現われて、比奈子はめった()ちにされた。あばらが折れて、声も早々(そうそう)に出なくなり、腕や脚をあちこちから引かれて、ちぎれた。悲鳴ひめいが出て、すぐに「あ、いま、呪文(じゅもん)を唱えればよかった」と後悔した。


 帰還(きかん)のチャンスは、それっきり来なかった。


 声帯(せいたい)が踏みつぶされた。


 ゆがんだまぶた隙間すきまから、三人の魔術師(まじゅつし)がやって来たのが見えた。いち番まえにいるのは、(あかね)だった。


 すぐに飛んでくる。助けようとしているんだと思った。でも、助かったとして、もはや自分にはなにもないことを、比奈子(ひなこ)(さと)っていた。


 頑張っても、ただ嘲弄(ちょうろう)されるだけの、滑稽(こっけい)な人生。それが、比奈子の(にな)う運命だった。


 あかねはちがう。


 才能さいのうがあって、いろんな人たちから認められて、あんまりにも簡単に、結果を出せてしまう。


 (めぐ)まれている。


 彼女の立場をもらっても、いいと思った。そしてその渇望(かつぼう)は、茜も了解してくれる気がした。


 比奈子(ひなこ)は、憑依(ひょうい)魔術(まじゅつ)を解き放った。


 白い光のなかで、賢者(けんじゃ)がどんな顔をしたのかは、分からなかった。







 ・次の投稿は、説明用のストーリーになります。内容は、『御礼や、残酷シーンについてなど』です。


 ・読んでいただき、ありがとうございました。




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