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鉄と真鍮でできた指環 《1》 ~学院の賢者~  作者: とり
 【本編】第7幕 人をさがして
58/205

50.アラート






 ・前回のあらすじです:『迷宮めいきゅう五層目ごそうめで、和泉いずみあおいから、目的を追及ついきゅうされる』


 ・今回の大枠です:『和泉が、隠しごとをします』









 洞窟(どうくつ)に、ひやりとした空気が()ちている。和泉(いずみ)は、金髪(きんぱつ)の少女に訴えた。


「オレ、人を探して、ここまで来たんです。(さくら) 比奈子(ひなこ)っていう、()()みの女の子なんですけど」


「三つ編みの?」


 少女――(あおい)は、周囲を見わたした。


「あなたのお友達? おない(どし)くらい?」


「ともだち……っていうか。ただの同級生。としはオレより、いっこ(うえ)、だったかな。誰かがそうしゃべってるのを、聞いたくらいなんだけど」


 (さくら) 比奈子(ひなこ)は、落第生(らくだいせい)だった。


 理由は知らない。いっしょの(はん)で活動した限りでは、彼女は優秀(ゆうしゅう)魔術師(まじゅつし)だった。


「そう。残念だけど、この辺では見てないわね」


 葵は肩をすくめた。和泉(いずみ)は沈黙する。


「……あなたは、もう帰りなさいな。入れ違いになったのかも。(した)(かい)は、私が見ておくから」


 (あおい)腕時計(うでどけい)を確認した。時刻じこくは、夕方の四時(よじ)をまわっていた。


「あの、いっしょに連れていってもらうのは……」


「だめ」(しろ)い手が少年の顔を(せい)した。「かえりなさい。転移(てんい)魔術(まじゅつ)は使える?」


 和泉は首を(よこ)にふった。むずかしそうに、葵は腕を()む。


「……すすむのも(もど)るのも、あなたにとっては同じ『危険』ね」


 夕暮(ゆうぐ)(どき)は、迷宮内(めいきゅうない)魔物(まもの)発生率(はっせいりつ)が上昇した。葵は魔法(まほう)でつれて帰ることも考えたが、目のまえの少年は、性懲(しょうこ)りもなくもどってきそうだった。


 ぴっと、少年の目のまえに指を立てる。(くろ)(まなこ)が、()()をした。


「……聞いてね、和泉くん」


 和泉いずみは目を()せたまま、こくこくした。


六時(ろくじ)までは、その比奈子(ひなこ)ちゃんっていう()をさがすのを、手伝ってあげます。でも、時間を過ぎたら、いさぎよあきらめなさい。あと、迷宮にいるあいだは、私のそばを離れないこと」


 パッと、和泉は顔を明るくした。寄り目はやめた。


「はい! ありが――」


「それと、最後にもうひとつ」


 ピン、と葵の(こえ)()る。


(あか)法衣(ほうえ)の女の子――私の(いもうと)なんだけど。その子を見かけても、絶対に、あなたのほうからは声をかけないで」


 和泉(いずみ)は固まった。赤い法衣の少女とは、きっと、(あかね)のことである。


「えっと……わ、分かりました」


 あおいに、和泉は約束した。あかねと友達だというのは、言わなかった。







 ・読んでいただき、ありがとうございました。




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