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鉄と真鍮でできた指環 《1》 ~学院の賢者~  作者: とり
 【本編】第5幕 賢者
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38.禁じられていないあそび




 ・前回のあらすじです。

 『主人公しゅじんこう和泉いずみは、ヒロインのあかね才能さいのうを嫉妬して、茜とは関わるまいとしていた』


 ・今回の大枠おおわくです。

 『あかねが和泉に仕返しをします』









 和泉(いずみ)は足を止めた。


 庭園のしげみが、風にそよぐ。そこかしこで、セミが鳴く。


 彼は法衣(ほうえ)の下で、肩を落とした。


(……かわいそうなことしたかな)


 両腕を組んで、首をひねる。


(考えてみれば、あの子自身になにかされたわけじゃ、ないんだよな……)


 学院(がくいん)に来てから、遊びに誘ってくれたのは、史貴(しき) (あかね)だけだった。


 和泉には友達がいなかった。ルームメイトの生徒とも、言葉をわすことは、ほとんどない。


(結構、かわいい顔してたし……)


 自分をのぞきこんできた少女の面差しを思い出す。


 和泉は首を横に振った。ほおが熱くなっていた。


「さっきから、ひとりで何してるの?」


 横から少女が顔を出した。かたまでの金髪に、緑の目の女の子である。史貴 茜だ。彼女はこっそり、和泉(いずみ)について来ていた。


 和泉は、うしろにたたらを踏む。


 (あかね)は、ニヤ~と笑った。それから指を鉄砲(てっぽう)のかたちにして、彼女は少年の胸に突きつけた。


 少女は魔法を放った。呪文じゅもんはない。それは『ひばりの技法(ぎほう)』と呼ばれる、一流の魔術師が使える秘術だった。


 かぜの砲弾が、少年を()っとばす。


 和泉いずみは地面に尻から落ちた。心臓が、ドキドキしていた。


 茜は、ダボついた法衣のそでを胸のまえで組む。彼女は和泉のまえで、ふんぞりかえって立っていた。


「わたしに嫌味を言った、(むく)いだよ。でもまだちょっと、腹の虫がおさまらないなー」


 和泉は目を白黒させた。あかねは自分の(あご)を、グーにした手で押さえる。彼女は罰を考えていた。


「ま、いっしょに遊んでくれるっていうなら、さっきの無礼も許してあげるよ。おにいちゃん、名前は?」


 (あかね)はニコ、と笑って和泉(いずみ)を見下ろした。


「……和泉……」


 和泉は苗字みょうじを名乗った。下の名前も告げると、少女は、「なんか、弱っちい名前だね」と言った。


「ま、いっか。和泉ね。好きだわ、キレイなひびきで」


 少女は小さな両手を合わせた。和泉いずみの鼓動は、『好き』という言葉に高鳴った。でも、それが名前の語感(ごかん)に対する感想と知った瞬間に、消沈(しょうちん)した。

 

「と、向こうで、チャコ待たせてたんだ。そろそろ行こ。かくれんぼするの。ふたりはつまんないから、困ってたんだ」


 にこー、と茜は笑って、和泉の腕を引っぱった。


 和泉いずみは立ちあがる。ズボンの汚れを、たたいて落とす。




   ~~~~~~~~~~~~~~~



 かくれんぼは、ジャンケンで鬼を決めた。


 和泉(いずみ)は負けた。


 彼は、探す(がわ)になった。




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