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鉄と真鍮でできた指環 《1》 ~学院の賢者~  作者: とり
 【本編】第1幕 魔法の世界
4/205

4.タブー2




   ・前回ぜんかいのあらすじです。

   『主人公しゅじんこうがドロボウをしているところに、敵役の比奈子ひなこがやって来る』


   ・今回の大枠おおわくです。

   『説明回せつめいかいです。ヒロインの史貴しき あかねに起こった出来事についてです』









 憑依(ひょうい)魔術(まじゅつ)は、学院(がくいん)をふくめた【(うら)】の世界にいるあいだは、おそれるに(あたい)しなかった。

 魔術師(まじゅつし)の【生活圏(せいかつけん)】たる領域では、(たましい)の安全が保障されている。


 ()には見えない自然の精霊(せいれい)妖精(ようせい)たちのちからが【生活圏】には充溢(じゅういつ)していた。

 自然(しぜん)化身(けしん)たる彼らのもたらすエネルギーは、ひとの魂を瓦解(がかい)させる能力(のうりょく)を持たず、肉体からはなれた状態であっても、崩壊(ほうかい)するという危険はない。

 たとえ幽体離脱(ゆうたいりだつ)の状態にあっても、ふよふよと辺りをただようだけ。

 そうした、むき出しの精神であってもかたちを保持できる環境では、憑依も解決可能(かいけつかのう)な事象の(ひと)つにすぎなかった。


 元来(がんらい)、精神と肉体は同一人物(どういつじんぶつ)のものではたがいに引かれ、違う存在のものであれば拒絶(きょぜつ)する。

 憑依(ひょうい)はそうしたバランスを崩し、無理に他者(たしゃ)のからだにとりつく技術のため、内在する(たましい)は結びつきが弱く、魔術(まじゅつ)でひきはなすことができた。

 からになった身体には、自然と自分の人格(じんかく)がもどる。

 ただし、あまりに距離(きょり)がはなれていたり、もはやそれだけの気力(きりょく)を持たない場合にはその限りではない。

 前者(ぜんしゃ)は近づけてやれば解決し、後者も外部から魔法(まほう)介入(かいにゅう)することで十分措置(じゅうぶんそち)が可能だった。


 憑依(ひょうい)は、もとの魂が消滅(しょうめつ)して、はじめて完全な移植(いしょく)を達成する(じゅつ)だった。


 (たましい)が消える。

 というのは、【迷宮(めいきゅう)】のなかでのみ起こる事象である。


 【迷宮】は、魔法の素材(そざい)や化け物の()危険区域(きけんくいき)であり、魔法研究者(まほうけんきゅうしゃ)らにとって重宝(ちょうほう)すべき採取地のことで、学院とは【ポーター】と呼ばれるひずみによってつながって()()

 内部(ないぶ)は地下へとつらなる幾層(いくそう)ものフロアで構成されていて、どの層にもいびつな魔力(まりょく)が満ちている。

 そのちからは、死によって肉体という(よろい)(うしな)った人間の魂をたやすく破壊(はかい)した。

 それはひとつの存在がべつの世界(せかい)に生まれ変わり、ちがう人生を謳歌(おうか)する可能性を永久的(えいきゅうてき)停止(ていし)することを意味する。


 そうした絶望と()()わせの『死』を目前(もくぜん)にひかえた人間が、なにを(かんが)えるかなど知れたものではない。

 ()のまえに、誰かを犠牲(ぎせい)にすることによって自分が()きのびるすべがあったとして、使わないものがいったいどれだけの数いるのだろうか。

 (すく)なくとも、学院(がくいん)魔術師(まじゅつし)には、他者の倫理(りんり)や義理や人情をうたがうだけの道理(どうり)があった。

 実力主義(じつりょくしゅぎ)標榜(ひょうぼう)する一方(いっぽう)で、学内では権威と圧力(あつりょく)迎合(げいごう)による蹴落とし合いが横行(おうこう)し、だれもが自らの素行(そこう)の内に心当(こころあ)たりを感じていた。


 ()にかけの魔術師に(ちか)づいてはいけない。

 という警告(けいこく)は、迷宮区内における自衛手段(じえいしゅだん)であると同時に、学院の魔術師たちが長い時間をかけて(はぐく)んできた、疑心暗鬼(ぎしんあんき)集大成(しゅうたいせい)でもあった。

 学院(がくいん)賢者(けんじゃ)であるはずの魔女、史貴(しき) (あかね)は、その禁を破った。

 迷宮区(めいきゅうく)、地下(だい)六十六(ろくじゅうろく)(そう)

 (あかね)はそこで、四肢(しし)と顔の原型(げんけい)を失った友人――(さくら) 比奈子(ひなこ)を発見した。

 そして彼女に近づき、憑依(ひょうい)され、いなくなった。




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