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鉄と真鍮でできた指環 《1》 ~学院の賢者~  作者: とり
 【本編】第1幕 魔法の世界
3/205

3.タブー1



   ・前回ぜんかいのあらすじです。

   『主人公が弟子でしに頼まれて、触媒しょくばいを取りに行く』


   ・今回の大枠おおわくです。

   『主人公が、敵役てきやく遭遇そうぐうします』



   ――――――



   『魔法まほう』と『魔術まじゅつ』の表記のちがいに、深い意図いとはありません。

   ノリや、語感ごかん都合つごうで表現を変えている。というていどです。

   みにくかったら、すみません。









 ペンキのはがれた(まど)めがけて、和泉(いずみ)は、石の壁を上昇(じょうしょう)していった。

 ガラス()しに、室内をのぞく。

 なかには、誰もいなかった。

「……(から)(くだ)く、ピクシーの(まい)


 手をかざし、ガラス窓に小声で呪文(じゅもん)(とな)える。

 内側(うちがわ)のカギが、カシャリと(はず)れ、ひとりでに開いた。

 ひろい室内にすべりこみ、(すみ)にある整理棚(せいりだな)へと向かう。

 ()()しをあけ、黒く塗装(とそう)された木箱(きばこ)を、彼は手に取った。


 ぱかりと開けると、四角く加工(かこう)した純銀(じゅんぎん)が、きれいに並べて保管されている。

 (あかね)が、魔法(まほう)実験用(じっけんよう)に集めていたものだ。水晶(すいしょう)もある。


 きぃ……。


 廊下(ろうか)のほうで、(とびら)のひらく音がした。


「また泥棒(どろぼう)?」

 ()きなれた声に、和泉は反射的(はんしゃてき)に振り向いた。

 ひとりの少女が、部屋の入り口に立っている。

 ()が低く、目鼻(めはな)立ちのととのった、人形(にんぎょう)のように、(あい)らしい少女だった。

 髪の色は金色(きんいろ)で、肩の位置で、きれいに切りそろえられている。

 (おさな)輪郭(りんかく)にはまった両目は緑色(みどりいろ)で、大きく、(まぶた)縁取(ふちど)るまつげは長い。

 (はだ)の色は、病的(びょうてき)に白かった。

 それは彼女がすっかり外出(がいしゅつ)しなくなったことの証左(しょうさ)でもあった。

 小さな身にまとっているのは、清潔(せいけつ)なブラウスと、スカート。そして、【賢者(けんじゃ)】にのみに与えられる、赤い法衣(ほうえ)

 それは、十一歳(じゅういっさい)で時間の止まってしまった少女の身体をすぽりと(おお)い、あまった(すそ)を、木の床にひきずっていた。

 ほそい首には、五芒星(ごぼうせい)を彫った指環(ゆびわ)()ってある。


 史貴(しき) (あかね)


 ()のまえにいるのは、まちがいなく、和泉(いずみ)がそう呼んでいた少女だった。

 だが、そこに宿る(たましい)が、今はまったくの別物(べつもの)であることを、彼は知っている。


(さくら)……比奈子(ひなこ)か……」

 和泉(いずみ)は、胸のなかで歯噛(はが)みした。

 (あかね)のなかに()むその少女こそが、すべての元凶だった。



   ・・・・・・・・・



 (さくら) 比奈子(ひなこ)は、茜よりふたつ年上の魔女(まじょ)だった。


 実力(じつりょく)は、中のじょう

 勤勉(きんべん)で、まじめで、順当にいけば、多くの学院生がそうするように、都市(とし)(まち)で、ふつうの生活を(のぞ)むことができるタイプの人物(じんぶつ)だった。


 しかし五年前(ごねんまえ)、比奈子は茜に魔法(まほう)をかけた。 

 その魔術(まじゅつ)は、学院(がくいん)にいるものならば、だれもが知っている(のろ)いだった。


 相手の人格(じんかく)を弾き出し、自分の精神(せいしん)を、相手の肉体にうつす技法(ぎほう)


 憑依(ひょうい)魔術(まじゅつ)


 (ひと)の身体をのっとることのできるこの魔法は、使うことを禁止(きんし)されてはいなかった。

 (みずか)らの肉体を(うしな)うことを条件に発動(はつどう)される憑依(ひょうい)の技は、禁じるまでもなく、だれもが使うことに、抵抗(ていこう)を感じていた。

 魔術師(まじゅつし)たちに(きん)じられたのは、『()にかけの魔術師に(ちか)づくこと』だった。




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