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鉄と真鍮でできた指環 《1》 ~学院の賢者~  作者: とり
 【本編】第2幕 迷宮
18/205

17.知らざるを知らずと為せ、是れ知るなり




 ・前回のあらすじです。

 『主人公しゅじんこうと魔女が、迷宮からられなくなる』


 ・今回の大枠です。

 『主人公と魔女、が会話をする』










 肉体にくたいは、疲労をむかえていた。空腹くうふくもある。


 化けものをって、食ったとして、体力たいりょくつか、わからなかった。


 六十六層は、場合によってはゴールではない。より深いそうを、探索する危険きけんもある。


 勢いに任せて、準備じゅんびおこたった。


 和泉(いずみ)は今になって、自分の早計(そうけい)さにづいた。いまさら、である。


 (あおい)は、隘路(あいろ)をすすむ。


「……あたまと、使い勝手のよさだけが()()の人が、ひとりいるわ。その子が、なんとかしてくれるかもしれない」


 通路はあつかった。あるくたびに、神経を摩耗まもうする。


 和泉は、葵の期待する人がだれかをらなかった。しかし、その光明にけかった。完全な自業自得じごうじとくなのだけれど。


「もっとも、こうがこちらの事態を知っていればの話しだけどね」


「おあげなんじゃないですか」


 和泉(いずみ)はボヤいた。すぐに、自分のくちをふさぐ。


 魔女まじょは背を向けたままだった。


「門は、回復かいふくするわ」ふたり分の歩調ほちょうが、ひびく。「原因さえりのぞけば」


「あの、」


 和泉は魔女にいついた。となりにることは、しなかった。


「入り口が不安定になったのは、やっぱり、(あかね)影響えいきょうなんですか?」


「そう考えるのが、妥当(だとう)ね」


 通路は、ふたりをおくへみちびいた。


 広大なエリアにる。大地は、火の池でふさがっていた。天井はたかい。


 冷えてかたまった部分だけが、足のだった。(あおい)は魔術できあがる。


「あの、無発声(むはっせい)って、どうやるんですか」


 和泉(いずみ)いた。小さな意地が、彼に魔法まほうえいじるのを、『はじ』にしていた。


 葵はくちごもる。


「あえて言うなら、『ひばりはどこでくか』、ね」


「どこで鳴くんです?」


 葵の指先は、彼女(みずか)らをついた。


 和泉は、示すところをじっとる。そこには、葵のむねがあった。


「すっ……」


 和泉はとっさに離れた。


「すみません……」


 (あおい)は首をかたむけた。彼女は、まえにきなおる。


「ねえ、和泉くん」


 和泉(いずみ)は、反応をしなかった。葵のくちにした呼称が、自分をすものとづかなかった。


 彼女には、『先生せんせい』と、立場で呼ばれたほうがながい。


「……なんでもないわ」


 葵はんだ。和泉も小さく呪文じゅもんとなえて、つづく。


 ――ひばりは、どこでくのだろう。


 和泉は、早く音のない魔法まほうを、使いたかった。




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