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鉄と真鍮でできた指環 《1》 ~学院の賢者~  作者: とり
 【本編】第2幕 迷宮
12/205

11.攻撃性




 ・前回のあらすじです。

 『主人公しゅじんこうが、五年ぶりに、迷宮めいきゅうにおとずれる』


 ・今回の大枠です。

 『主人公が、怪物と戦う話です』









 コボルトたちは、咆哮ほうこうをあげた。


 棍棒こんぼうを振りかぶり、白髪の魔術師に、びかかる。


 和泉(いずみ)は、うしろにんだ。色のぬけた前髪を、ふっと空圧くうあつが揺らす。


 先頭の一匹の打撃が、地面を穿(うが)つ。ゆかの破片が、る。


 和泉は、となえた。


「くさむらを()ぐ、とかげの息!!」


 法衣ほうえのそでを、一閃させる。


 化け物たちを、業火ごうかがつつむ。


 灼熱しゃくねつのなかで、四体のシルエットがもがいた。金切り声を、轟音ごうおんく。


 一匹いっぴきが、正面にけ出した。


 棍棒こんぼうはない。


 だるまの肉塊は、幽鬼ゆうきのように両手をして、和泉に迫る。


「っ……! どっ、」


 右手みぎてを突き出す。呪文じゅもんを、わめく。


動乱どうらんあおぐ、アテナの産声(うぶごえ)!」


 鋼鉄こうてつやいばが、和泉の右手に現われる。


 火をまとう、獣をす。


 コボルトは止まった。


 ずんぐりとした短躯(たんく)が、生きることを放棄ほうきする。

 魔物の身体から、炎がえる。


 ものは、くずれ落ちた。


 くろずんだ身体と、毛の焼けたにおいが残る。


 和泉(いずみ)は、剣の(つか)にぎりしめた。

 たたかいの女神のちからを導き、実体化した、魔力まりょく凶刃(きょうじん)である。


 武器を握る手は、震えていた。


 実戦じっせんの経験が、和泉にはとぼしかった。


 学生がくせいの時分に、課外実習で、第三層まではおとずれたことがあった。


 あさそうは、構造が単純で、魔物も弱く、初等部三年生までの履修(りしゅう)を終えたものであれば、安全に採取をおこない、もどってこれる難易度なんいど探索たんさくの容易なフロアで、魔物にうことは、(まれ)だった。


 研究者や、大学部の生徒が頻繁に立ち入るため、怪物たちは定期的な駆逐を受け、絶対数を減らし、また、人を警戒して、無闇むやみりに出るのをひかえていたのだ。


 たまに魔物と遭遇することがあったとしても、実習中は、引率いんそつの教員が対応していた。


 それ以外いがいにも、……一度いちどだけ、和泉は、学生時代(がくせいじだい)に迷宮に入ったことがある。


 そして賢者けんじゃを追って、深い、危険なフロアにむことになるのだが、その時も、魔物と戦い、道を切り(ひら)いてくれたのは、同伴した、べつの誰かだった。


 和泉いずみは、かぶりを振る。


(……びびってる場合か)


 身体の震えは残っていた。


 刃物はものをたずさえたまま、走りだす。


 彼は、通路に消えていった。

 深層しんそうを目指す。




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