畑にて
『ここ最近、全く雨が降っていないおかげで作物が育たなくて…』
「成る程成る程、私達にお任せください!あ、場所を教えてもらっても宜しいでしょうか!?」
ーー夏のある日。素戔嗚の二人のもとに、一本の電話が掛かってきた。電話の相手は、農作業をしているという中年男性。前述の通り、日照りの日々が続いていることが原因で、農作物が育たないという相談を持ち掛けてきた。
電話に出た春一は男に場所を教えてもらうと、直ぐにお伺いしますと言い、電話を切った。
「雪ッ、お仕事だぜィッ!今回はお前がいなきゃ私だけじゃァ何も出来ん!行くぞッ!ついて来いッ!」
「あぁ…」
二人は支度をし、男が待っているという場所まで向かった。
約三十分後ーー。
電車を使ったりしながら、目的地までやって来た。緑色が一面に広がっていて、住宅地はずっと向こうに見える。
そんな中、辺りを見渡していると畦道から二人に手を振っている麦藁帽子を被った男がいた。二人はそれに気付き、男のもとまで向かった。
「こんにちは!頼まれ屋です!」
「こんにちは…」
「いやぁどうも、来ていただいてすみませんねぇ」
男は眉を少し下げ、麦藁帽子を押さえながら軽く一礼した。
依頼人であるこの男は五十代くらいで少し色黒という、いかにも畑仕事に専念しているような風采だった。
「いやいや!それで、作物が育たないから何とかしてほしいっていうご依頼でしたね!」
「ええ、この暑い日が続く中、全く雨が降らないのでねぇ…」
「このままでは、干害が起きてしまうのでは…」
「そうなんですよ、それが恐くてねぇ…」
「水遣りはできないんですかッ?」
「水遣りはねぇ、やっちゃダメなんだよねぇこれが…」
「えッ、何でッ?」
「水遣りでは水の量が不足して、土の表面しか濡れない…故に苗は根を伸ばせず更に水を欲し、水遣りが必要不可欠な脆弱な苗と化してしまうんだ…」
一雪は、何故と疑問を持っている春一に述べた。
「おお、よく知っているねお嬢ちゃん」
「すみません、此奴、男なんです」
春一は一雪の頭に手をポンと置き、一笑しながら一雪の性別を訂正した。男は真実を聞くと少し驚き、一雪に謝罪した。
「えッ、そうなのッ?ゴメンね…?」
「いえ…」
一雪も、性別を間違われることにはもう慣れているようだった。
「ですがまァ、こんな女子らしい容姿でも此奴は、今回のこの事件を解決へ導いてくれる超絶重要人物なんですぜィおやっさんッ!」
「事件…なのかな…?まぁ事件だよね、干害になっちゃったら…。というか、この子が重要人物って…?」
男はただひたすら、疑問に思うだけだった。