プロローグ
「有難う御座いましたー!」
都会のとある一所で、少年の声が響いた。生き生きとした声のその少年は、頼まれ屋・素戔嗚の一人である北蔵春一。対応していた依頼が終わったようで、手を大きく振りながら、帰って行く依頼人を見送っていた。
「…北蔵、君も終わったか…」
そこへ、もう一人の素戔嗚の一員がやって来た。綺麗な白髪の少女――
「おッ、雪、お前の方も終わったんだな!」
「あぁ…依頼人の娘御に女の子と間違われた…」
「またか!だが無理もない!誰がどう見たって聞いたって女子だからな!身長も低めだしな!可愛らしいぞ、女子のように可愛らしい!」
「そういうことは女の子に言え、僕に言われても困る…」
ではなく、少年だ。春一とは対照的に消え入りそうな小さな声で話すのは、青重一雪。少女のようでもあり、雪のようでもある、可愛らしい少年だ。
「よし、依頼も済んだことだし帰ろう!」
「あのぉ、すみません」
「あッ、はいッ!何でしょう!?」
帰ろうとしていた二人の背後から、一人の中年女性が声をかけた。
「頼まれ屋さんですよね?ちょっとお願いしたいことがありまして…」
「ご依頼ですか!私達に任せてください!」
「ありがとうございます。家のことなんですが、来ていただいても大丈夫ですか?」
「どうぞどうぞ、遠慮なく連れて行ってやってください!行くぞ雪、お仕事だぜィッ!」
「あぁ…」
どうやら今日はまだ、帰れそうにはない。が、二人の少年は嫌という感情を少しも持たずに、依頼人の後について行く。
素戔嗚は、何事にも臆することなく、犯罪関連以外ならばどんな依頼でも受け込み、成し遂げる。
決して少年だからと、侮ってはならない。