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おとぎ裁判  作者: 神楽澤小虎
11/32

【第1審】~10~

ジュードは小さなため息とともに言った。

「トーチの皆さまのご希望は承りました。異例ではありますが、

 ドロー様が被害者であるオオカミ側につくということで

 進めさせていただきます。」

「はぁ?!マジで言ってんのか、ジュード!」


「ええ、マジでございます。

 アケチ様、一番大事なことをお忘れなきよう。

 裁判は観衆を楽しませる()()()なのですから。」


有無を言わせない態度で俺を威圧してくる。

裁判が見世物だなんてバカげている。

俺は赤ずきんとオオカミの方を見た。二人とも不安そうな目でこちらを見ている。

俺だけでも公正な裁きを行わなくてはなるまい。

どちらにしても最後に判決を下すのは裁判長であるこの俺なのだから。


「裁判を続ける!」



「よし来た!もんちゃん、効果音!!カモン!」


_人人人人人人人人人人_

> パララッパパー! <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄


ってか、もんちゃんって誰だよ!

おっさんの登場音ダサいし!満足顔やめろ!


ドローは勝ち誇ったように前へ出てしゃべり始めた。

「皆さま、どうです?赤ずきんをご覧ください。清廉潔白なイメージ。

 そして、じつに美しい!

 誠に残念ながら、人は見た目の情報で簡単に翻弄されてしまう。

 しかも、当時はまだ幼かった赤ずきんが震える声で証言した言葉を、

 誰が偽りだと疑うことができたでしょう?」


「裁判長!これは明らかなる印象操作です!」

ブルーが阻止しようとするがおっさんの勢いは止まらない。


「こちらのオオカミくんはじつに心優しいオオカミだ。

 親御さんに過保護に育てられ、狩りもろくにしたことがなかった。

 それでおばあさんを殺せますか?赤ずきんを襲うことができますか?」


「異議あり!では、赤ずきんがオオカミ以外の誰に狙われたと言うんです?

 あなたの言っていることは筋が通っていない!」

「ふふふふ、だからさっきからこちらのロブくんが言っているだろ?母親にさ。」

「いや、さっきロブは母親を守ろうとして嘘の証言をしたって言ったんですよ!

 これじゃ、真逆だ!」

「ではこうしよう。赤ずきんの母親はクレイジーだった。

 赤ずきんは母親が悪いことを知っていた。でも逆らえなかった。

 だいたいおかしいと思いませんか?オオカミが出る危険な森に

 どうして幼い少女を、しかもこんなに()()()()()()()をわざわざかぶせて

 行かせたんです?どうです、皆さん!

 母親としてこれほどの矛盾がありますか?!ここにいる心優しいオオカミは、

 そんな母親から赤ずきんを守ろうとしたんです!

 それなのに、赤ずきんの偽証によって服役を余儀なくされた!

 そんなオオカミの気持ちがあなたにわかりますか?」


「だから何のために母親がそんなことをする必要があるんですか!

 単なる言いがかりだ!」

おっさんとブルーの攻防を見ていたロブが、

何かを思いついたように低い声で言う。


「ブルー。じゃあお前は、母親というだけでみんな判を押したように、

 当たり前に子供を愛するものだと言い切れるのか?」

「それは……!」

「子供に無条件に愛情を注ぐ母親がいる中で、平気で自分の

 子供を放置し、虐待する母親が一定数いるのも事実だ。

 ()()()()()()()()が存在するようにな。

 それが世の常なんだよ、ブルー。」


ロブの落ち着いた声にブルーは思わず赤ずきんの方を見た。

赤ずきんは、まるで真相を突き止められたかのように小刻みに震えていた。


「まさか…本当に?」


驚くブルーの言葉に、しんと法廷が静まり返る。

俺の頭の中にもひとつの疑問が浮かぶ。

「確かに自分の娘が訴えられてるっていうのに、

 母親はどうして出て来ないんだ?」

「…裁判長、赤ずきんの母親はあの事件以降行方不明となってまして。」

「行方不明?」

「わかった!駆け落ちだ!母親にはいい男がいたんだ!」

相変わらずのロブの発言にすぐさまブルーが言い返す。

「憶測にすぎない!それに、恋人がいて子供が邪魔になったのなら、

 おばあさんに赤ずきんをあずければいいだけだ!根拠が甘い!」


「…甘いかぁ。」

「根拠ねぇのかよ!」

ドローに突っ込まれてもロブは懲りた様子がない。

「根拠ならあるぜベイベー。未亡人に恋人がいた。

 子供のことも忘れるぐらい燃え上がる恋!まさにドラマチック!

 観衆はそういうものを求めている!」

「そうじゃなくてさ! こう…だからなんかあるだろ!」

おっさんもさすがにロブの発言に(いら)立ちを覚えたらしい。

だが、ロブは少し考えた素振りを見せただけだった。

「う~ん、別に何もなくても、

 今までカッコいいってだけで許されてきたからね、俺。」

「いけすかねぇ!」


自分たちを擁護するはずのやつらが好き勝手言ってるというのに、

当事者である赤ずきんもオオカミも黙って下を向いている。

だが次の瞬間、オオカミと赤ずきんの目がふいに合った。

すぐに赤ずきんが目を逸らす。なんだろう今の空気は…。


「裁判長!聞いてるんですか?!」

ブルーのヒステリーな声に俺は我に返った。

「ああ、ロブの言っていることは無茶苦茶だ。

 だが母親、おばあさん、赤ずきん…俺も何かそこに矛盾を感じる。

 ただ…まぁ女の考えは男にはわからねぇからなぁ…」

「そうですねぇ。女性同士は親子でも複雑ですから。」

ジュードもそれに共感する。

「はーい♪それでは女性を代表してあたしがぁ~。」

「メロディ、お前はしゃべんな!」

「ええ~!ひどいぃ~~」


メロディが女性代表というのはあまりに無理がありすぎる。

法廷内の誰もがそう思ったその時…


「うっ……はぁ…はぁ…や、やめろ!」

ブルーが突然苦しみ出した。

立っていることもままならず、胸の辺りを抑えてガクガクと震える。

「え?何この人、どうしちゃったの?発作?」

「だ、大丈夫ですか?」




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