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第8話 鑑定結果

「お待たせしました!鑑定が完了しましたよ!」



ギルドに戻ると、受付のお姉さんが朗らかな声で俺にそう伝えた。



(さすがに発表の瞬間となると、胸がざわつくな‥‥‥)



「大丈夫、お前はいい能力を持ってるよ」



「私たちを助けてくれたんだもの、きっとすごいものに違いないわ!」



「レアスキルを持っている可能性もありますからねぇ!」




緊張している俺を見てか、みんなが口々に励ます。




「それでは結果を発表します!まず〈魔粒子(マナ)〉の量は‥‥‥500000です!!」




「「「500000!?!?」」」




ロイ達だけではなく、ギルドの中全体がどよめく。


俺だけはその数値がどれ程のものかピンとこないので一人その騒ぎの輪から外れてしまった。




「なあ、それって‥‥‥どのくらい凄いんだ?」




「凄いなんてもんじゃねぇです・・・・・・・


500000なんて数字は災害級と言っても過言ではないレベル・・・・・・・・・


それこそ王族の、その中でも限られた才能の持ち主が果てしない修練の先に到達すると言われる領域でさぁ」




「凄い‥‥‥これだけマナがあれば存在する魔法全てを使うことだって夢じゃないわ・・・・・・

それこそあの魔法だって・・・・・・・」




「やっぱりただ者じゃなかったな。にしてもこれだけの数字・・・・・・・ニホンではこれが普通なのか?」




それを聞いて、俺は少し誇らしい気持ちになった。


今まではゲームの腕前を画面越しに誉められただけだった。だが、こうして面と向かって俺の存在を肯定してもらえるのは久しぶりだ。




(やっぱり、転生した今の世界の方が幸せだな‥‥‥)




俺は目を閉じて喜びを噛みしめる。




「それじゃあ次は職業ですね!」




そう言って受付のお姉さんは今さっき奥の機械から出てきたばかりのシートを取り出した。




「にしても、500000ものマナのやつに合う職業なんてあるのか?」



「最上級の職業と言ったら聖騎士だけど・・・・・・・それでも500000は規格外だ」



「ともかく!お前はテンデルの希望の星だぜ!」




ギルドのあちこちからそんな声が聞こえてきた。




「それでは発表します!職業は‥‥‥‥‥‥‥‥」



ゴクリ・・・・・・・・



ギルドにいる者全てが息を飲む・・・・・・・・



‥‥‥‥‥‥しかしなぜか、いつまで経っても受付のお姉さんは口を開かない。


ふと目を開けると、俺はその人の様子がおかしいのに気がついた。おかしい、と言うようにシートとにらめっこを続けているのだ。



「ど、どういうこと?こんなことって・・・・・・・」



「どうしたんだ?はやく言ってくれよ」




待ちかねたロイが口を開く。




「えっと、その・・・・・大変申し上げにくいのですが・・・・・・・・

あなたの職業は・・・・・・・・無し・・・・・です」




一瞬の静寂の後、ギルド内は笑いに包まれた。



「おいおいセリカさん、冗談はよせよ」



「そうだぜ?あんなマナを待ってるやつが無職だったら俺は一体なんになっちまうんだよ」



しかし、騒がしい冒険者達とは対照的に、セリカさんの表情は真剣そのものだ



「セリカさん、機械の故障ってことは考えられないのか?」




ロイが異議を唱えた。だが、




「それは‥‥‥あり得ませんね‥‥‥。鑑定機が故障するなんて聞いたことがありませんし‥‥‥」




セリカと呼ばれた受付のお姉さんが申し訳なさそうに言った。みんなが哀れむような目で俺を見る。




「すみません、鑑定シートを見せてもらってもいいですか?」




俺は信じることができず、鑑定シートをセリカから受け取ると、とある間違いに気づく




「あの、このシートに記載されている名前は俺のものではありませんよ?」



「え?おかしいですね。そんなはずは無いのですが・・・・・・

お名前をお聞きしても?」



「俺の名前は風間リョウです、でもほら。

ここには、ナギ・ミトラスと書いてあります!!」



俺は必死に抗議した。



「ふむ・・・・・もしかして‥‥‥あなたは国外からやってこられた方ですか?」



「そうよ、ニホンって所からやって来たって聞いたわ」



ミラが横から説明する。




「そうですか‥‥‥。実はこの国では不法就労を防止するために、ギルドカードにはこの国の戸籍に則った名前でしか登録出来ないんです。



しかし、あなたは戸籍を持たないのに名前を与えられました。それは‥‥‥」



「それは、何だ‥‥‥?」



「監視下に置かれたことを意味します」




「「「監視下!?!?」」」




またもみんなが一斉にどよめく。俺もその重々しい言葉の雰囲気に動揺を隠せなかった。




「それってつまり‥‥‥監禁されるってことか‥‥‥?」




「落ち着いてください。必ずしもそうだとは限りません。


しかし、近い内に王都から監視者があなたのもとへ派遣されると思います。




恐らく、王都は‥‥‥あなたほど強大なマナの持ち主を野放しには出来ないと判断したのでしょう。


‥‥‥とにかく異例づくめですね‥‥‥」




(そんな‥‥‥まさかそんなことになるなんて‥‥‥)




やはり自分はつくづく運がないな、と俺は思った。




「しかも、多分あなたが監視される理由はそれだけではありません。‥‥‥問題なのは、このスキルです‥‥‥」




そう言われて、俺はスキルが書かれた欄に目をやる。


そこには、〈遊戯遊戯(エグゼクト)〉という文字と、赤い判子のようなものが押してあった。




「これって‥‥‥一体どんなスキルなんだ‥‥‥?」




「それは‥‥‥すみませんが、私もよく分かりません。聞いたことが無いスキル名ですし‥‥‥。




恐らく、新種のスキルか、先史文明のスキルだとは思うのですが‥‥‥




でも、この印が押してあるということは、相当強力なスキルだということです」




「だから自由にはできない、ってことか‥‥‥」




俺はそう呟いた。




◇ ◇ ◇




それから、俺は陰鬱な気分で一日を過ごした。休む場所が無いので、この夜は一人でギルドに寝泊まりすることになった。もちろん、外には警備付きだ。




(こんなんじゃ全然くつろげないな‥‥‥)




そう不平を漏らす相手もおらず、苛立ちだけが募った。


朝になると、ドアをノックする音で目が覚めた。




「我々はユーゼント王国近衛騎士団である。こちらに拘束されているナギ・ミトラスの護衛のため王都より参った!!」



名目上は護衛、か。そうでも言わないと、こんな暴挙が許されるはずがない。



しかし文句を言っても状況が変わるわけではない



(はあ、仕方ない。行くか‥‥‥)



俺は渋々とドアを開けた。


その時の俺は、この出会いが後々の人生を大きく変えることになるとは知る由も無かった。



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