第5話 再来
◇ ◇ ◇
雫が額に当たり、俺は目が覚めた。
辺りは薄暗いが俺は自分の周りにあるものをよく知っている。
(ベトッ)
「やっぱり俺は・・・死んだ・・・・・・よな」
ズタボロの服、そして何より周りに飛び散った信じられない量の血・・・・・・。
呼吸は乱れ、気分は最悪だ・・・・・。
(俺は死んだ・・・。確かに死んだはずなのに生きている。)
あの時<CONTINUE>を選んだことで生き返ったと考えるのが、ありえないと思うだろうが自然だろう。
「グルルルル・・・・・」
「!?!?」
(あいつ、まだ居たのか!! 不味い、今生き返ったばかりなのにまた殺されたでは話にならない。)
俺は懸命に気配を消し、音を殺して洞窟の出口の方へと向かう。
遠い、出口は見えているのに果てしなく遠く感じる。
あの怪物は追ってきていないか、出れたとして助けは来るのか、数え切れない不安に押しつぶされそうになるが、
俺は必死に出口を目指した。
「ハァ・・・ハァ・・・・・」
(なんとか出ることができた、あいつも追ってきていない様だし今のうちに誰かと合流しなければ)
幸運なことに、道無き道を走ってきていた為、折れた草木が目印になってくれている。
(そういえばあの3人組はどうなったのだろうか、せっかく忠してくれたのに申し訳ない・・・・・虫がいい話だが助けを求めるしか無い。)
ガサガサッ
「!?」
茂みが揺れ、何かが近づいてくる。
(モンスターか!?不味い、今出会ったら挟み撃ちだ。
頼む、人であってくれ・・・・・)
17年間、運がいいとは言えなかった俺の人生。
長年微笑まなかった幸運の女神は、不幸中の幸と言うべきか今回は味方をしてくれた様だ。
「あ!いましたぜ!!」
「マジか!無事なのか!?」
「怪我はしてない様ですが、服がボロボロで・・・・・・
何があったんですかい?」
そんな事を聞いてくるが俺にそんな余裕は無い。
「待て、待ってくれ。忠告を無視したことは謝る。
だから今はとにかく安全なとこへ連れていってくれ。」
「おいおい、どうしたんだよそんなに慌てて。
それにその・・・・・早く服を着てくれないと・・・・」
「だからそんなこと言ってる場合じゃ・・・・!!!」
「グゥオゥァァァァ!!!」
(クソ、もう追いついてきやがった!!)
「キャァァァ!!!」
「おいおいおいおい、なんだありゃ!!?」
「あ、あれは〈撲殺熊〉!!」
撲殺熊は、武装している3人を警戒しているのか、まだ攻撃は仕掛けてこない。
「なあ、この熊はあんたたちの実力で勝てる相手なのか?」
「なんとか・・・・と言いたいところだが、まず不可能だ。王国の聖騎士ならまだしも、そもそも3人で戦っていい相手じゃねえ。」
「そうか・・・」
初めて見る俺でもこいつのヤバさは分かる。彼の言ってることは間違いなく真実だろう。
何かでは無いかそう考えていると。
「ロイの旦那、ミラさんとそこのお方を連れて逃げてくだせぇ・・・・」
「ブレッド!?何を言って・・・・・!!」
「あっしが時間を稼ぎます。だからその間に助けを呼んでくだせぇ・・・・・」
「無茶よブレッド!!そんなことしたら貴方が!!」
「こうするしか無いでしょう!!この中で一番防御力があるのはあっしです。
なぁに、100発くらいならこの〈牙獣ノ盾〉で耐えてみせますよ。
それに、王都1の俊足と言われたロイの旦那なら安心できやすしね。」
「・・・・・・・ブレッド・・・」
「・・・・・・・みんな、行くぞ・・・・・・・・・・・すまん、ブレッド・・・・・必ず戻る!!!」
その時、撲殺熊が体をあげ、攻撃態勢に入った。
「旦那!!早く!!!」
ブレッドは盾を構え、防御の態勢に入る。
その背中は頼もしく、絶対に通さないという意思がはっきりと伝わった。
「メキャッ」
「え?」
その時信じられない光景が目に映る。
ブレッドの盾は撲殺熊の一撃で見るも無残に破壊されていた。
「なっ」
ブレッドの悲痛な叫びが聞こえる、撲殺熊は無情にも次の一撃の為、攻撃の態勢に入っていた。
「「ブレッドォォ!!!」」
続く二人の悲鳴、しかし撲殺熊は意に介さずその拳を振り下ろした。




