第4話 暗い部屋
ここは‥‥‥どこだ‥‥‥‥?
気付けば俺は真っ暗な空間の中にいた。何だか身体が浮いているかのように軽く、現実味がない。
失ったはずの右足も、腹に開けられたはずの穴もいつのまにか元通りだ。
(これが‥‥‥天国ってやつなのか‥‥‥?)
俺がそんな縁起の悪い想像をしていたときだった。
急にどこからともなく光が降り注ぐ。まるでスポットライトのようなそれは、俺の数歩先を照らしていた。そのライトの先にあったのは‥‥‥
(これって‥‥‥俺のパソコン‥‥‥!?)
間違いない。七色にまばゆく光るPCケースに、2つ並んだ大型のモニター。そしてその前には、限定カラーの使い古されたコントローラが置いてある。‥‥‥どれも見覚えのあるものばかりだ。
俺はゆっくりと歩を進め、それらの前に座った。
すると、何もさわってないのにモニターに光が点った。
そこに写し出されたのは、〈Mitlas〉の文字と‥‥‥
俺の死体。
「うっ‥‥‥げぇっ‥‥‥‥‥‥!」
自分の死体が弄ばれてるのを見て、俺は激しい吐き気を覚えた。あの猛獣が俺を意味もなくぐちゃぐちゃにしているのが見える。
「くそっ‥‥‥!やめろ!やめろぉぉぉ!!!」
だが、俺の叫びがモニターの向こうに届いていないのは明らかだった。
なぜ俺がこんな目に遭わなければならないのか。俺はただテストプレーに協力してあげただけなのに。
どこで俺は道を間違えた?一人で逃げた時からか?いや、それとも‥‥‥VRゴーグルをはめた時からか?
「くそっ、くそっ‥‥‥‥‥‥!!」
そう言いながら、俺はでたらめにコントローラのボタンを押しまくった。理不尽な死を受け入れきれなかったのだ。だが、そんなことをしても何も変わらない。
‥‥‥これがただのゲームならどんなによかっただろう。セーブができて、簡単に復活できる世界だったら‥‥‥。
でも、そんなことはあり得ないというのは薄々分かっていた。殺されるときのあの感触が、あまりにもリアルだったから。
(ああ‥‥‥本当にはかない人生だったなぁ‥‥‥。せめて、もう一回チャンスがあれば‥‥‥)
その時だった。
ザザーッ!!!
そんな音と共に、モニターの中の世界が歪んだ。その直後に写し出されたのは、真っ黒な背景と、
『CONTINUE?』
の文字。
「これは‥‥‥生き返れるってことなのか‥‥‥?」
そんなことは考えても分かるはずもない。
だが、少しでも復活する可能性があるならば。少しでも生き返れるという望みがあるならば‥‥‥
賭けるしかない。
俺は、コントローラの決定キーを強く押した。視界がまた白に染まってゆく‥‥‥‥‥‥。




