第3話 GAME OVER
俺は声の主がいる方向を恐る恐る振り向いた。
そこにいたのは、巨大な熊だった。いや、熊と言うには違和感がある。その腕は身体に似つかわしくないほど肥大化しており、まるでそれを足の代わりに使って移動しているようだったからだ。
(くそ、なんで次から次へとモンスターが来るんだ!?まだこっちは丸腰なのに‥‥‥!)
とにかく今は逃げるしか生き延びる道はない。
俺は身を翻して一目散に洞窟の出口をめがけて走り出した‥‥‥その時だった。
グ シ ャ ッ
何かが潰れる音がした。それと同時に、俺は
バランスを失い地面に倒れ込む。
俺は足元の方へ目をやった。自分の身に何が起きたのかも知らずに。
「あ‥‥‥あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
俺の目が捉えたのは‥‥‥無惨に叩き潰された
自身の右足だった。膝から下にかけては相当強い力でやられたのだろう‥‥‥原型を留めておらずヘドロのようになっている。
(やばい‥‥‥このままじゃ確実に殺される‥‥‥!)
気付けばその猛獣は俺に止めを刺そうと、もう片方の腕を高く掲げていた。
「くそ、やめろ‥‥‥やめろおぉぉぉぉ!!!」
ドゴォッ!!!
血の味が口中に広がる。俺はかすれゆく視界の中であの化け物の腕が自分の腹を貫通しているのを捉えた。熱いものが溢れてゆくのを感じる。
(ああ‥‥‥俺は死ぬんだ‥‥‥‥‥)
そう悟ると同時に意識が薄れていった。もはや痛みも感じない。
『GAME OVER』
完全な暗闇の中で、そんな声が聞こえた気がした。




