第2話 怪物
「おい!まだ起きないのか!?」
「今やってるって!!」
「旦那!!もう保ちませんぜ!!」
何やら周りが騒がしいな。誰の声だ……?
「今≪回復≫し終わったわ!!」
「直ぐに退散しますぜ!!早く起き上がらせてくだせえ!!」
「おい!目を覚ませ!!」
そんな声と同時に俺は身体を激しく揺さぶられた。たまらず俺は目を見開く。
「う、うぅ……。うわぁっ!!」
目の前にいたのは若い男女2人組。遠くでは大きな盾を持った男が何やら叫んでいる。
若い男が心配そうに俺に声をかけた。
「おい、走れるか!?魔物の大群が直ぐそこまで来ている!!早く逃げねえと殺されるぞ!!」
魔物?何を言っているんだ?
そう思い、身体を起こすと目の前には信じられない光景が広がっていた。
そこにいたのは全長3mはあろうかという巨体に、全身を藍色の毛で覆われた怪物。何より目を見張るのは2本の大きな角を生やした牛の頭。
そう、それはまさに神話に出てくるミノタウロスそのものだった。
「何だよあれ!!?」
言うが早いか俺は怪物とは逆方向へと走り出す。
「おい!待て!!1人で行動するな!!」
何を言っているんだ、あんな怪物を目の前にして逃げるなとは無理がある。
俺は振り返ることなくその場を後にしたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
どれくらい時が経ったのだろう。俺はとある洞窟の中に身を潜めていた。
「一体なんだよあれ……。」
激しい鼓動とは裏腹に脳は冷静さを取り戻していた。
そもそも何であんな場所に俺は居たんだ?
確か俺は<Mitlas>をプレイするためにゴーグルを付けて…
と言うことは此処はゲームの世界。もしそうならば操作方法があるはずなのだが、MEMU画面すら開けない。
「クソ、やっぱ説明書読むべきだったな」
俺は何か手掛かりは無いかと辺りを見渡す。
「ん、何だこれ」
歩いていた足に当たったものを拾い上げてみる。
「何だこれ、木の枝か?」
(おかしいな、この辺りに木など無かった筈だが……)
そう思い拾い上げたものを見て俺は驚愕した。
「うっ……」
骨だった。何の骨かは定かではないがそれは直ぐに明らかとなる。
暗闇に目が慣れてきてよく辺りを見ると、そこら中に骨が落ちていた。
しかも所々に人の頭蓋骨のようなものまで落ちている。
(マズイな……。こんなに沢山骨があると言うことはつまり此処は……)
「グゥオァァァァ!!!」
俺がそう思ったのと同時に、荒々しい咆哮が洞窟の中に鳴り響いた。




