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第14話 評議

〈叡知の塔〉の中は、様々な装飾が散りばめられていた。

正に、「豪華絢爛」という言葉がふさわしい。


「賢者が居るのは、この上です。〈評議〉もそこで行われます」


「いよいよって感じだな‥‥‥。よし、行くか」


俺たちは議場への長い階段を登る。

やっとの思いで最上階に着くと、おもむろに扉が開きだした。

議場の中には、ローブに身を包み、顔も隠してしまっている人たちが三人、豪華な椅子に腰掛けている。

恐らく、あの三人が賢者だろう。


‥‥‥だが、それ以上に目を引いたのが、彼らの背後にそびえ立つ大樹だ。


「なあ、あのでかい木はなんだ?」


「あれは〈全智の樹〉ユーゼント王国の象徴です。あの樹にまつわる伝説は、数えきれないほど多くあります‥‥‥」


確かに、そういわれてみれば何やら神秘的なものを感じる気もする。

それに、よく見てみればこの〈叡知の塔〉は日光を通す造りになっていて、樹の生長を妨げないようにできている。

まるでこの樹のための服だ。

現実でも、これほど大事にされている樹は見たことがない。


「時間です。こちらに来なさい、ナギ」


俺が樹に見とれていると、不意に賢者が口を開いた。


「うぉっ!?」


それと同時に、俺の身体は宙へ浮いた。さらに四方八方から黒いリングが飛来し、それらはあっという間に俺の身体を拘束した。


「おい!何を‥‥‥」


言い終わる前に、黒リングが頭上からすっぽり被さり、収縮して完全に俺の口を塞いでしまった。


「あなたに発言権はありません。〈評議〉の決定を待つように」


賢者の一人が忠告した。


「「「では、評議を行います」」」


その宣言と同時に、塔の中が急に暗くなった。かと思えば、エレナとが光に照らされ、闇から浮かび上がる。

だが、照らされたのはエレナ一人ではなかった。


そこにいたのは‥‥‥間違いない、アルバーンだ。


「近衛兵団長。まずはあなたのナギの評価を聞かせてください」


賢者の一人が口を開いた。


「分かりました。こちらをご覧下さい」


そう言って、エレナは水晶を取り出す。あれは、教授からもらった〈記録(ログ)〉だ。

エレナがそれを天にかざすと、それは粉末状になって飛散し、一瞬のうちに暗闇に巨大なスクリーンを作り上げた。


(凄い‥‥‥こんな魔道具もあるんだな‥‥‥)


俺はスクリーンに映る映像を見ながらそう思った。

現実世界で動画をみたことは何度もあったが、これはそのどれとも違う。直接頭に働きかけてくるような美しさがあった。

どうやら魔道具は、現実で再現できないものがたくさんありそうだ。


「このように、ナギは私だけでなく、この国を救っております。よって監視を解き、食客として迎え入れるのがふさわしいかと思います」


エレナは毅然とした態度で賢者を説得した。


(証拠も、証言もある。よし、このままいけば俺は晴れて自由の身だ‥‥‥!)


そう思ったが、次の瞬間。


「ネズミが一時的に尻尾を振っただけでないと誰が証明できるのかね?」


アルバーンがすかさず反論した。


「賢者の皆様、このネズミを信用してはなりません!この者は、ユーゼント王国を病に陥れる癌なのです!」


「妄想もここまで来るとあわれですね。まあ、そこまで言うのならなにか証拠がありますよね?」


「証拠?よろしい。では、これをご覧いただこうか」


アルバーンが指をならすと、すぐに台車に乗った大きな木箱が運ばれてきた。それは、人一人くらいなら簡単に入りそうな大きさだ。


「開けたまえ」


アルバーンが、エレナに指示する。エレナは、それに不承不承ながらも従った。


木材がきしむ音と共に蓋が開く。その中に入っていたのは‥‥‥


「これは、ナギの死体ですよ、エレナさん」


「なっ‥‥‥!?」


エレナは、訳が分からないといったような顔だ。

だが、俺にははっきりと分かる。あれは、紛れもなく、俺が「風間リョウ」だったときの死体だ。


(うッ‥‥‥おぇぇ‥‥‥っ!!)


激しい吐き気が俺を襲うが、口元を覆うリングがそれをさせてくれない。


「おや。ネズミ君の表情を見るに、正しかったようですな。つい最近、聖騎士にこれを拾ってきてもらったんですよ」


エレナは青ざめた顔で俺を見つめる。


「さあ、賢者様!このような怪しい人物を野放しにするおつもりか?!」


このままではまずい。だが、仲間に疑心が生まれてしまい、状況はこれ以上良くなるとも思えなかった。


「さあ!この者に断罪を!!」


(くそっ!このまま殺されるなんて‥‥‥!)


その瞬間、俺の首もとがまばゆい光をはなった‥‥‥!


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