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アンソリテール 〜Dreamer's Card〜  作者: 姫蝶 火織
第1章 カードの世界
4/15

第3話 『継承』

 今回からカードの呼び方が少し変わるので後書きで整理しておきます。

 大戦の終結から百数十年が経ち、その爪痕がほぼ完全に世界から消え去る頃。

 二人の天才の二人目、モーラル·ブライソンが誕生する。


 彼は比較的裕福な家庭に生まれ、両親の愛を受けてのびのびと育った。学業の方も優秀で、超難関との呼び声が高い大学に合格、卒業後はカードの国立研究所で働き始めた。


 当時、カードの研究は行き詰まっており、発展は少なかった。戦争でカード研究の資料のほとんどが失われたのも痛い。そこに新たな可能性を見い出したのがブライソン博士だ。


 当時のカードの性能は開発された当時と大差が無く、物体の収納と還元の二つの機能しか持たなかった。変わったことといえば、安全のための装置が付け加えられた程度だ。


 そこで彼が目を着けたのがAIと脳波測定の技術だ。

 もちろん、カードにAIを搭載する研究は長年に渡って続けられてきた。カードを使用するにあたっての還元の仕方の調整が難しかったので、AIを利用して、安全かつ最低限のコストで望む効果を得ようというものだ。


 しかし、イレギュラーへの対応が難しいAIは日常で使えない。また、効果と人間のイメージとの間で少なからず齟齬が生じてしまう。


 そこで博士は、人間の脳波測定で捉えたイメージに出来るだけ近い効果をAIがカードの性能限界を計算して発揮する、という仕組みを作りだした。


 この仕組みを利用することで、イメージと効果の間に齟齬が生じることも無くなり、燃費も良くなった。カードの事故も減少し、良いことずくめだ。

 そして、このカード制御法の副産物として生まれたのがフェノメノンカード、効果がイメージをもとに働くカードだ。


 さて、ただでさえわかりにくい所を更に混乱させるような登場をしたフェノメノンカードだが、実のところこれは全く難しくない。なぜなら、これは今までの吸収して還元するだけのカード、マテリアルカードと、本質は全く同じなのだから。


 マテリアルカードは物体を吸収し、還元する。その際、ブライソン博士によって開発されたカード制御法を使えば、物体の還元場所や大きさを調節でき、望む効果を得られる。

 対してフェノメノンカードはもたらす効果が固定されている。そしてカードの中には、その効果を発生させるにあたって必要と思われる物体が収納されているのだ。この場合、カード制御法で調整するのは効果の種類と大きさだ。


 わかりにくいので具体例で説明しよう。


 例えば、生肉を乗せたフライパンの下にマテリアルカードで「炎」を還元して焼くとする。ここで調節するのは炎の大きさや温度で、そのためには「炎に対してのイメージ」が必要だ。もちろん焼き過ぎれば焦げる。


 それに対して、フェノメノンカードの「燃焼」を使うのであれば、焦がす心配は要らない。カード制御法で、どの位焼くのかを固定するからだ。

 イメージに応じて焼き加減をコントロールし、その後はカードに任せておけばいい。

 つまり「焼かれるものに対してのイメージ」を使ってるわけだ。焼かれた結果のイメージとも言える。


 ここまであれこれと説明してきたが、要するに、マテリアルカードよりフェノメノンカードの方が扱いやすいという事だけ分かってもらえれば問題無い。


 まあ、イメージを使うとは言ったが、別に何か考える必要は全く無い。自分の中にある常識が自動反映されて、大きなミスを防ぐ機能と思ってもらえればいい。


 トランプに「切る」というフェノメノンカードを使っても、トランプが切断されないようにするための機能、と言うとわかるだろう。もっとも、そんな事にカードを使う奴は滅多にいないが。

 

 閑話休題。



 かくして、使いやすく安全なフェノメノンカードが誕生した。もちろん、この技術によってマテリアルカードも相当扱い易くはなったのだが、フェノメノンカードが普及しあまり使われなくなった。


 この発明を起点に、カードの研究はまた一段と前進をみる。

 フェノメノンカードは一般人にも使い方がわかり易く、極めて便利な代物だったため、ほんの数十年で至極当たり前に使われるようになっていた。

 また、この時代にカード保管用ストレージ、通称「バインダー」が制作され、一瞬のうちに普及率が90%ほどに達した。


 バインダーというのはカードを一括して管理出来る機器で、大量のカードも容易に持ち運べる。また、本人以外に使用できないため、貴重な物もこの中に収納しておけば盗難被害に遭うこともない。そんな道具だ。

 開発当初はハードカバーの本くらいの大きさだったが、今では手帳ほどの大きさまで小型化されている。


 バインダーは、カードの短所を補い、利用価値を高め、カードが広く一般に普及することに一役買った。



 こうしてカードが一般人にまで浸透し、ようやく平和利用が実現した頃。

 ある事件が起きた。

 ブライソン博士が突然行方不明になったのだ。


 なんとも、博士が自室で姿をくらませた、という話のようだ。

 そして、そこには謎の遺書だけが残されていたらしい。



 それからちょうど95年後、現在に至るというわけだ。

カードの呼び方の変化


変更の境はフェノメノンカードが作らた時



変更前


 カードの種類:マテリアルカードのみ


 呼び方:全て「カード」



変更後


 カードの種類:マテリアルカードとフェノメノンカードの2種類


 呼び方:マテリアルカードとフェノメノンカードは区別し、総合してカードと呼ぶ。

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