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転生?7


「メイド、どこにいる?出てこい。」


「はい、ここにいます。」


暗闇から突然その姿を現した。


「そういやお前、名前ってあるのか?」


「残念ながら私も貴方と同じです。名前などはありません。メイドでも女とでも何でもお呼びください。」


「なら、僕が勝手に命名してやる。・・・キサギ、キサギって名前だ。僕はそう呼ぶことにするよ。」


彼女は顔色を変えることなく、沈黙の了解を表した。


「それでキサギ、僕は決断したよ。天使様の考えに従う。あの二人を・・・殺すよ。」


「・・・貴方がそんな選択をするとは、何かあったのですか?」


「そんなこと、お前には関係ないだろ。」


僕は、僕の欲望を貫く、生きる。

生存欲だ。

例え・・・あの二人の命の上に立ったとしても。


「犠牲の上に夢を叶える。それが理想を体現させる道なんだろ。」


僕は立ち上がる。

そして、カユラ達のいる方向に体を向ける。

罪悪感を感じないわけじゃない。

寧ろ、手は今も震え続けている。


「・・・それで、殺すって一言だけど、どうやって殺すんだ?この左腕で触って殺すのか?」


「いいえ、殺し方はもう決まっています。彼女達は、大量の化物に殺されます。それは彼女達が化物の巣窟に果敢に挑んだからです。」


キサギはそう言い、一度、目を閉じる。


「貴方は彼女達を城へと案内してください。その瞬間になれば、意味が解ります。」


キサギは再び、闇に消えていった。


「その瞬間になれば・・・か。」


痛みは右側に広がっていく。

何時までもつのかわからないこの状況。


「はは・・・・ほんと、最低野郎だよ。穏やかな暮らしがしたいから目の前の二人を殺す、なんてね。ああ、殺人鬼みたいだよ。」


僕はカユラの方向に歩き出す。

顔には、首筋から黒い痣がついていた。


「あ、イツキ!何か見つかった?」


「いや、何も見つからなかった。これからどうするんだ?何もここでは見つからなかったけど。」


「ええ、それを今から考えようと・・・・。」


カユラとミルの口が止まる。

僕の顔に何かついているのだろうか。いや、この痣についてか。


「・・・その、後ろの娘誰?」


「後ろ?後ろって誰も・・・ってのあ!?」


そこには、さっき消えたはずのキサギが立っていた。

キサギはぺこりと頭を下げる。


「初めまして、お城から逃げ出した所をイツキ様に助けられたメイドです。」


「あ、ど、どうも・・・初めまして?」


ダメだ、カユラが対応に困っている。

ミルは呆然としている。


「時間ももったいないので、私から提案がございます。」


キサギはそう言い、一呼吸、間を設けた。

一呼吸で落ち着ける話への入り方ではないが、仕方ないのだろう。


「このまま王の間がある王宮へと目指すべきです。逃げるときに王の間で化物達に命令をしている女性の姿を見ました。もしかすると化物達を操る魔女の可能性があります。」


「だとすると・・・この騒動は人為的に引き起こされたということなの?」


先程まで状況を呑み込めず、たじろいでいたカユラが、人が変わったように話に食いついてきた。


「はい、その可能性は十分高いと思われます。」


「なら、その魔女を倒せば・・・化物達も。」


僕はキサギの耳元に寄り掛かる。


「・・・何でいきなり出てきたの?」


「これも殺害計画の一部です。貴方が決心した、その時点で殺害計画はスタートしているのです。貴方は、フェルミナ様の意思に従って行動すればいいのです。」


そうゆうことか。

どうやらあの天使様は僕が言いなりになったという事実だけで満足したようだ。

だが、正直に言えば助かった。

僕には多分、この二人を殺せないだろう。


「それでは早く行きましょう!ミル、イツキ・・・それとキサギ!これはもう時間の問題・・・。」


「待って下さい姫様、まずは一度落ち着いてください。すべてを信用してはなりません。もっと詳しく聞かせて下さい。」


そう言ってミルはキサギとカユラの間に割って入った。

キサギはまた一呼吸置き、その口を動かした。

その言葉は、残酷で、ポツリと湧き出していた希望を考えさせるものだった。


「王の間には、女性が化物を率いていました。そして、その女性は、王妃ローゼリア様です。」


「・・・え?」


「そして、あの化物達は元々・・・。」


突然、カユラが走りだした。

この場から逃げ出したと言った方がいいのだろうか。

・・・まさか、自分の母親が希望の為の糧なんて、この世界は厳しすぎる。


「・・・僕が追いかけるよ。その間、ミルとキサギは出来る限りの情報を集めていてくれ。」


僕はそう言い残し、カユラの後を追いかけた。


「な、待てイツキ!」


「ミル様、カユラ様の事はイツキ様に任せましょう。私達が行ってもカユラ様を慰めることはできないでしょう。」


ミルは走り出そうとしたが、キサギがそれを止めた。


「・・・あぁ、確かにキサギ、貴様の言う通りだ。だが私は貴様を完全に信用しているわけではない。」


「それで構いません。こんな無意味な会話よりも今は情報を集めることが大切です。」


ミルとキサギはお互いに見つめ合い、そして近場にあった本を取り、ページをめくる。





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